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With me

第10章 キスされても知りませんよ



すると、頼んだわらび餅とあんみつが運ばれてきて、小さくいただきますをする


「美味しい~♪」

「どれどれ?ボクにもくれませんか」


紫苑が二口目を食べようとすくったものを喜助がパクっと食べる


「た、隊長…っ!」


これって…間接キス…


「こっちも食べる?」

「え?いいんですか?…だって‥」


だってそれ隊長が食べたやつじゃ…


「はい、口あけて」


言われるがままに口をあける

まさかまさか、浦原隊長に食べさせてもらえるなんて、なんかもう今日は幸せすぎる


「紫苑サン、あんこついてる」

「え、どこですか?」

「ここ」


そう言って紫苑の唇のすぐ脇のあんこを指でとると、そのままそれをパクっと食べた


「な、なんで食べちゃうんですかっ」

「あ、もしかして…」


口で取ったほうが良かったっスか?

なんて耳元で囁くから、もう私は沸騰寸前だった


「もぅ、からかわないでください!」

「アハハ、ごめんね」


時間がたって店内もいくらか空きがでてきたようだ

食べ終わった容器を脇に置き、紫苑は話し始めた


「私、貧血気味なんです」

「貧血?」

「そんなにひどくはないんですけどね、調子悪いとすぐ…」


日が大分傾いてきて、空が少しずつ赤くなっていく


「ごめんね、もっと早く気づいてあげてれば…」

「私が気づかれないようにしていたんです。隊長と、楽しい時間を過ごしたかったから…」


そう言ってきゅっと握る彼女の拳を、上からそっと包もうとする手を止めた

何をやっているんだボクは…

彼女といると、理性というものが何処かに飛んでいってしまいそうになる


「じゃあもう少しだけ、ボクと楽しい時間を過ごしませんか?」

「…はいっ」


ゆっくり、なるべくゆっくり帰り道を歩いた

浦原隊長は私に合わせて同じスピードで歩いてくれるから


「今日はすっごく楽しかったです!」

「紫苑サンに喜んでもらえて良かったっス」


自室がある建物が見えてきた

空はほとんど赤く染まっている


「1日がもっと長ければいいのに…」

「え?」

「そしたらもっと隊長と一緒にいれるのに…」


なんちゃって、と笑う紫苑を喜助はふいに抱き寄せる

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