第62章 新婚の在り方
「楽しかったでしょ?」
「楽しないわ、ボケ」
「アイタっ!」
拳骨でゴツンと頭を叩かれる
背中を向けて歩き出す真子
ちょっとやり過ぎたかな…
ごめん
そう言おうとしたとき、真子が立ち止まって振り返った
「…良かったな」
「…うん!」
すぐに真子に追い付いた
真子の隊長復帰は少し前に決まっていた
私の処分は後回しにされちゃってたけど、今日漸く決まった
「紫苑にはまだナイショだからね」
「わーっとるわ」
そこで平子は不自然に立ち止まる
数歩歩いて気づいた琴乃はキョトンとした顔で振り返った
「お前に渡したいモノあんねん」
…─
「さてと、紫苑は局っスかねぇ…」
尸魂界に降り立った喜助は、のんびりと散歩をするかのように技術開発局へ向かった
…─
「紫苑、十八番できてるか?」
「…」
「紫苑?」
「え?あ、ごめん。十八番だよね?」
はい、と阿近に手渡す
「大丈夫か?少し休憩しろ」
「平気平気!早く終わらせちゃお!」
代わりに阿近から十九番の容器を受け取り、作業を始める紫苑
「ったく、昔っから自分のことは後回しなんだからよ」
表に出て煙管を取り出すと、カランコロンと特徴的な下駄の音が聞こえた
「浦原さん」
「阿近サン、お疲れ様っス」
紫苑の迎えか?にしてはまだ早い
「紫苑ならまだ仕事中ですよ」
「知ってますよン。大変そうなんでお手伝いできたらなぁと。涅サンには一回断られたんスけどねぇ」
「紫苑に会えなくて寂しいだけだろ」
「良くお分かりで」
朝は顔を合わせたと思ったらすぐに尸魂界に行ってしまうし、夜もご飯を食べてお風呂に入って疲れているんだろう、すぐに寝てしまう
耐えきれずに押し倒してしまうこともしばしば…
その後で凄く後悔はする
「丁度良かった。アイツのこと休憩させてくださいよ。俺の言うことなんて全く聞かねぇで、ぶっ通しで仕事してるんで」
「紫苑らしいっスね」
頑張りすぎるのは紫苑の良いところでもあり、悪いところでもある
ただそれで働けなくなっては本末転倒だ
喜助は阿近が出てきた扉から、局内へと入った