第61章 アナタが笑顔なら 後編
オマエが笑顔なら
「お会計13980円でございます」
財布から現金を出そうとした俺は、はっとした
つい毎年の癖で、今年も花屋に来た
プリザーブド?っちゅー枯れない花っちゅーのを買いに来たんやけど、今年は…居るんやな
てことは何か、あの墓はそりゃ形だけやけど、ほんまただの石っちゅーことか
だって死んでへんかったんやろ
「あの~、お客様?」
「え、あ…あぁすんません!」
と、雰囲気でとりあえず払ってしもうた
「…どないしょ…この花」
本人にあげるっちゅーても一応仏花やしなぁ
悩んで悩んでハゲそうやった俺は、その花を持ったまま浦原商店へ向かった
「ちゅーことで、これどうしたらえぇと思う?」
「お墓にやってあげれば良いんじゃないですか?」
「買っちゃったもんは仕方ないんじゃないスか?」
「墓に本人居らんのに、花もなにもないやろ」
「今までだって居なかったじゃないですか」
と言いつつ私はそこに琴乃が居るもんだと思って、不安な気持ちを聞いてもらったことがある
「お墓だって綺麗なほうが喜ぶんじゃないスか?」
「墓なぁ…あの墓そのままにしとくん?」
「そうですねぇ、せっかくたてたし…」
「お邪魔しまーす!真子来てるのー?」
げ
と平子隊長から聞こえた気がした
「げ、って何よ。居るじゃん、真子」
「お、おー」
「なにそのお花ー?」
平子はあきらめたように息を吐いた
「もうすぐ琴乃の命日だったから、毎年の癖でお花買っちゃったんだって」
「え、毎年買ってくれてたの?」
「…まぁな」
「これね、枯れないお花なんスよ」
「枯れないって何?どういうこと?」
「なんなら見に行ってみます?」
と、喜助の言葉で4人で尸魂界に来た
「本当に枯れてない…」
そこには美しく色褪せることなく咲いている花がいくつもあった
「私のお墓…つくってくれたんだね」
琴乃は他のお墓の前でも、手を合わせた
「琴乃、お墓どうする?無くそうか?縁起悪い?」
「一度死んだようなものなのに、縁起も何もないでしょ」
「そう…?」
「いーんじゃない?このままで」
ぐーんと伸びをしながらいつもの軽い感じは、あー琴乃だなって、安心した