第10章 キスされても知りませんよ
「さっきのお店で買ってもよかったんスけど、こっちのほうがいっぱいあるみたいだから」
白や赤、紫、青の花の髪飾り
ガラス玉のような簪…
目移りしてしまう…
「これもかわいい…これも素敵…」
浴衣に合わせたほうがいいよね
浴衣は白地に紫だから、やっぱり寒色系が合うかな?
薄紫の花の髪飾りと、青のガラス玉のシンプルな簪と迷っていた
「隊長はどっちがいいと思いますか?」
「ボクが決めちゃっていいんスか?」
むしろ隊長に選んでほしい…
「そうだなぁ…浴衣が大分大人っぽい感じだから、こっちの花のほうが可愛らしさもあっていいんじゃないっスか?」
「はい!こっちにします!買ってきますね!」
ダーメと髪飾りを取り上げると、そのままお勘定に向かって歩き出した
「髪飾りまで出してもらっちゃって、ありがとうございます!大切にします!」
どうやら隊長の目的は浴衣と髪飾りだったみたいで、その後は目についたお店に寄ったり、川原を散歩したり、夢のような時間だった
「紫苑サン、小腹空きません?ちょっと休憩しましょうか」
「そう…ですね」
手頃な甘味処を見つけて入る
「混んでますね」
「ここ人気みたいですね」
「ボクはわらび餅にしようかな」
「私はあんみつにしますね」
店内は既に満席、外に面した長椅子があいていた
「ここで大丈夫っスか?」
紫苑はコクンと頷いて喜助の隣に座る
「…紫苑サン、ちょっと顔色悪いけど大丈夫っスか?」
「え…」
「疲れちゃいました?」
ドキっとした
楽しい時間を壊したくなくて、無理して取り繕っていた顔がこんなに簡単に気づかれるなんて
「気づいてたんですか…」
喜助は少しだけ微笑んで
「ちょっと振り回しすぎちゃいましたか?」
「そんなことっ…凄く、楽しいです!」
「それは良かった」