• テキストサイズ

With me

第61章 アナタが笑顔なら 後編



「琴乃…」

「お帰りー」

「ただいま」


もしかして紫苑、今の聞いてた?

だとしたら…


「えっと…じゃあ私、真子とお散歩行ってくるからね!」

「あ、コラ…ちょォ待ち!」


慌ただしく2人が去っていく


「さ、部屋行きますよ。何してたんスか全く」

「う、うん…」


部屋に入って湯飲みを置いた喜助に、紫苑は抱きついた


「…どうしました?」

「いっぱいひどいこと言って…ごめんね」

「なんの話しっスか?」


抱き締める力を強めた

喜助さんは、私がどうして今謝ったのかも、あの部屋の前で何を聞いたのかも、きっと分かってるんだろうな

抱き締めた向こうで、喜助さんの顔が優しく、笑ってる気がする


「大好き…」

「ボクも大好きっスよ」


そろそろ寝なさいと、紫苑を布団に促した


「お茶、飲みます?」

「うん、ありがとう」


温かいお茶を一口含むと、小さなため息と共に疲れがどっと押し寄せてくる

ここ最近、色々あったからかな

心の安定を保つのは、なかなか難しい


「さっきの話しっスけど…」

「…さっき?」


布団の横に胡座をかいて、見つめる視線には気づいていたけど…


「阿近サンが大切って話しっス」

「あ…うん」


やっぱり少なからず喜助さんは嫌な気持ちになってしまったと思うし、その話しはなるべく避けようと思っていたのに


「ボクも居ますよ。紫苑の他に、大切な女性」

「………へ?」


なにそれ、聞いてない

不意打ちはやめてほしい

一気に心拍数が上がるのが分かる

ダメだ、動揺しては

だって私は同じことを…


「夜一サンとか」

「…っえ?夜一さん…?」

「恋愛感情を抱いたことはもちろんないっスよ。けど、彼女はボクにとっては、親友というか戦友というか…」


親友…戦友…なんだかどちらもしっくりくる


「彼女が居なければ平子サンたちは処刑されていただろうし、ボクは霊力を剥奪されていたかもしれません」


きっと100年前のことを言っているんだろう


「そういった意味で、ボクにとっては大切な存在であることは間違いないんス」

「そう…だよね」

「夜一サンにはこれからも、ボクの傍に居て欲しいと思ってます。これ聞いて、嫌な気持ちになりました?」

/ 761ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp