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With me

第61章 アナタが笑顔なら 後編



紫苑は首を横に振った

喜助さんが夜一さんを大切に思うの、分かるもん


「ね?だから、紫苑が阿近サンを大切だと思うことを、後ろめたく思わなくてもいいんスよ?」

「本当に?」

「本当に」


喜助さんはいつも、私の心が軽くなることを言ってくれる

さっきまで沈んでいた気持ちが、どんどん晴れていって、また違う意味で心拍数が上がる


「ありがとうっ!喜助さんっ」


とびきりの笑顔

あの事件以来久しぶりに見せてくれた、ボクの大好きな笑顔…

どうしよう…かわいすぎる…


「いたた…」


笑ったと同時に顔のガーゼに手を当てる紫苑


「大丈夫?」

「平気平気」

「ちょっと見せてごらん?」

「だめっ」


伸ばされた喜助の手が触れないように、ガーゼを手で覆った


「紫苑…」

「ごめん…でも、こんな顔…喜助さんに見られたくない…」


ガーゼに手を当てたまま、俯く紫苑


「勇音さんが、完全に綺麗になるとは言えないって…」


そんな顔しないで…

瞳を震えさせて、涙を溜めないで…

胸が痛くなる


「ボクは気にしないと、何度も…」

「うん、でも…」


今にも溜まった涙が落ちそう

それより先に、ボクは紫苑を抱き締めた


「ボクが治しましょうか?それか井上サンにでも…」

「いいの…」

「でも、ボクも紫苑のそんな悲しそうな顔、見たくないっスよ…」


喜助さんの羽織に涙が滲んでいく


「これは、彼女の痛みでもあるから…」

「彼女…」


まさか、まだあの人のことを気にかけているんスかねぇ…


「彼女の気持ち、痛い程分かるの…」

「うん…」

「私だって、喜助さんが違う人を想っていれば…同じことをしていたかもしれない…」

「うん…」

「だから…自然に綺麗になるまで…待ってほしいの」

「待つって…」


喜助の指にはまったお揃いの指輪をなぞるように触る


あぁ、結婚のことっスか…


「いいっスよ。いつまでも待ちますよ」


と言ったものの、一生消えない痕になったらどうするんスか…

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