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With me

第61章 アナタが笑顔なら 後編



「はぁ…はぁ」


十番隊から二番隊って……

遠い…!


ようやく二番隊の隊首室近くまで来たのに、さっぱり足が動かなくなってしまった

二番隊特有のピリピリとした雰囲気も感じる余裕がない

却ってよかったかも…

喜助さんとか夜一さんとか、よく平気だなぁ…


「紫苑?」

「砕蜂さんっ」


紫苑を見かけ駆け寄ってくる砕蜂


「大丈夫か?顔色が良くないぞ」

「うん、大丈夫…」

「とりあえず中に入れ」


腰を支えてもらって隊首室に入らせてもらった


「怪我は?もう大丈夫か?すまなかったな…」


正直、頬の傷も肩の傷も、まだ痛む

今でも思い出すと、あの恐怖にぶるっと身体が震える


「大丈夫だよ。それよりあの人…」

「あぁ、これから再収監するところだ。だからあまり時間がなくて申し訳ないんだが…」


やっぱり収監されるんだ

一生そこで生きるのかな…


「安心していい。もう出てくることはないだろう」


蛆虫の巣なんて制度なくなれば良いのに

蛆虫の巣がそもそもどういうところか、私は知らないけど…


「紫苑、変な情けをかけるなよ」

「べ、別に…そういう訳じゃ…」

「顔に出ているぞ」

「……」


情けをかけている訳じゃない

同情している訳じゃない

ただ、例えば喜助さんが選んだのが、私じゃなくて別の誰かだったら?

喜助さんの隣に居るのが、違う女の人だったら?

私はもしかしたら、あの人と同じことをしたかもしれない


「蛆虫の巣に入るのは、私だったかもしれない…」

「……紫苑?」

「あの、お願いがあるの…」






─…






十二番隊 技術開発局─




コンコン

紫苑は開きっぱなしのドアを叩いた

中の人物が顔を上げる


「紫苑、無事だったんだな」

「なぁに、知ってたの?」

「黒崎が何度か此処で、ため息ついてたから」


そういえば、黒崎くんとはしばらく会っていない

様子を見に来てくれた時は、私はまだ眠っていたし


「俺に言うなってな」

「話しやすいんだよ、きっと」


なんだか紫苑に褒められた気がして、阿近は照れを隠すように後ろを向いた


「ごめん…ちょっと、休ませて…」




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