第61章 アナタが笑顔なら 後編
「リョウ…先輩?」
「私が男の人が苦手になった原因の人…当時は十一番隊だったと思う」
「…あぁ!そういえば、その時に紫苑さんと初めて会ったんですよね」
「そうだっけ?」
「そうですよ。今も確か十一番隊に居ると思います」
そう聞いて私は十一番隊に向かった
…十一番隊に行ってどうするんだろう
そもそもリョウ先輩がまだ、麻美さんを探しているなんて確証もないのに、あんなことを口走ってしまった
そうだよね
もう100年もたってるんだよね…
もしかしたらもう麻美さんのこと忘れて…
馬鹿だな、私
いくら先輩に私の記憶がないからって、十一番隊に行って会う勇気もないのに
「はぁどうしよう…」
足取りが重くなってしまった
でも時間が迫っている
今日中には麻美さんはまた、収監されるらしい
それまでには…
「あら紫苑じゃない?」
「乱菊さん…!」
そっか、十番隊まできてたんだ
「こんなところでウロウロしてどうしたの?ていうかアンタ、身体大丈夫?」
「乱菊さん、リョウ先輩って知ってる?十一番隊の」
「全然答えてくれないじゃない。ま、いいわ。リョウって四席の?知ってるわよ、たまに飲みにいくし。知り合い?」
「昔、ちょっと……あのさ、リョウ先輩って彼女いるとか分かる?」
「彼女…そういえば顔はいいのに、ほとんど聞かないわね。何?なんかあるの?」
彼女はいない
でも、今居ないだけかもしれないし
やっぱり本人に直接聞くしか…?
「あ、そういえばこないだ、ずっと好きな子がいるって言ってたかも」
「え、本当?」
「確か、行方が分からなくなってしまって、ずっと探しているんだとか」
「それって麻美さんって名前じゃ?!」
「え?んー…名前までは分からないけど…」
「ありがとう!乱菊さん!」
紫苑は乱菊との挨拶もそこそこに、走り去ってしまった
あの子ったら……麻美ってどっかで聞いたような…
「ま、いっか!」
乱菊は伸びをして、またぷらぷらと徘徊をはじめた