第61章 アナタが笑顔なら 後編
「店長、もうよろしいので?」
「えぇ、長いこと子供たちを…助かりました」
琴乃サンが連絡をしてくれたそうだ
店にはテッサイと子供たちの声で、活気が戻ってきた
そして夜一サンも
「砕蜂から聞いたぞ」
「そっスか」
「全くお主は、紫苑が居らんと…」
苦笑いしながら、お茶を啜った
「浦原さん、顔色良くなりましたね」
「琴乃サン、おかげさまで」
「今回ばかりは、さすがの喜助も死ぬんやないかと思ったで」
「ご心配おかけしました」
浦原商店は営業を再開し、ボクは以前のような調子に戻った
紫苑は、熱は下がったものの事件のショックもあってか、まだ元気がない
「ほんで、紫苑は?」
「念のため検査に行かせてます」
「勇音さんのとこ?」
「ハイ」
「着いていかんのかいな。珍し」
「そりゃ着いていきたいし、お礼もちゃんとしたいんスけど、ちょっとお店開けすぎちゃいましたから…」
なるほど
こう見えても一応店主
一週間も店を休みにすれば、自ずと仕事は溜まる
「まぁ、虎徹サンのことは信頼していますし」
あぁ早く帰って来ないかな…
…─
「ねぇ、これ治る?」
泣きそうな目で紫苑さんは頬のガーゼを外した
その下には未だくっきりと残る、痛々しい刀傷の痕があった
「色々と大変だったんですね…」
あの人に襲われた後、初めてガーゼを外して鏡を見た日は絶句した
肩はまだ服で隠れるから良いけど、頬に大きな切り傷があった
触ったり、笑いかたによっては時々痛む
「ちょっと傷が深いので、時間はかかります」
「綺麗になる?」
「100%…とは、言えないです」
紫苑は半分覚悟していたように、言葉を飲み込み、新しいガーゼを当ててもらった
一通りの検査を終えて、特別異常は無かった
「喜助さんもちゃんとお礼したがってたんだけど…」
「気にしないでください。大好きなお二人の為ですから」
「…ありがと」
勇音さんが淹れてくれた、暖かいミルクティを飲み干して、カランとティーカップを鳴らした
「今日はもう帰るんですか?」
「ううん…あのさ」
「はい?」
「リョウ先輩って、今…何処の隊にいるかな」