第61章 アナタが笑顔なら 後編
気にはしてたみたいやな…
琴乃が包丁を置いたタイミングで、後ろからふわりと包む
「でも一護は感謝しとったで」
「感謝?…なんで?」
素直に疑問に思った
ムカついて、関係が悪くなる可能性だって充分にあるくらいの言いぐさだった
それを覚悟で言った
「目ェ覚めた気ィするって」
「…そう、なんだ」
「だからあんまし気にせんとき」
「別に気にしてないもん」
「ホンマか?」
「ホンマホンマ!」
「関西弁使うなや。似合わへん」
「真子のマネしてみただけ…ってちょ、ドコさわってんの」
「エェやろ?減るもんやないし」
「そういう問題じゃなくて」
「じゃあどういう問題や?」
「それは…その」
「はい、時間切れや」
「時間切れって…あ、もぅ!」
…─
夜中に目が覚めた
「ったぁ…」
酷い頭痛に負けてしばらく天井を見上げてた
何があったんだっけ…
どこから思い返せばいいのか
喜助さんに謝りに行って、そこにあの女の人がいて、また喜助さんを拒絶して、平子隊長が来てくれて、あの人に殺されそうになって
そうだ、喜助さんが助けてくれた
あんなに酷いことをしたのに、それでも私を助けてくれた
ゆっくりと身体を起こすと、枕元に薬と書き置きが置いてあった
「これ、勇音さん…」
来てくれたんだ…
あとでお礼を言いに行かなきゃ
「喜助さんは…」
重い身体を引きずって階段を降りた
一段一段降りる度に息が上がる
「はぁ…はぁ…」
寒気がする
そういえば、熱がどうとか平子隊長が言ってたっけ…
静まりかえる部屋
そのひとつを開けると
「居た…」
喜助さんの姿を確認したとき、一気に気が抜けたようにその場に座り込んだ
「良かった…」
ずるずると床を移動して、寝ている喜助の隣に行くと、そっと頬に触れた
暗がりで良く見えないけど、少し白い気がする
痩せた?
「喜助さん…ごめんね」
もう随分、喜助さんと会っていないような気がする
自業自得だ
拒絶して、突き放した
あの女の人と、何があったかは分からないけど、喜助さんはもうずっと、私のことを愛してくれてるのは、充分すぎるほど分かっているはずなのに