第61章 アナタが笑顔なら 後編
「誰よりもあの子のこと分かってるつもり」
親友であり、家族であり、分身のような、紫苑
「あの子は辛い思いをたくさんしてきた。だから幸せになってほしいの。そして紫苑を幸せにできるのは、浦原さんしかいないの」
「なんで…」
「全部、見てきたから…。浦原さんに出会う前と出会ってからの紫苑。紫苑のあんな幸せそうな顔、初めて見たから…」
いつも明るくて、何に対しても良い意味で、あまり深く考えてないような印象だった
「誰にも言ったことないけど、こんなのおこがましいけど…浦原さん以外は、私は認めない」
琴乃は
こんなにも、紫苑のことを考えていたなんて
「それに一護はちゃんと、気持ち伝えられたんでしょ?」
「あ、あぁ…」
「それって凄いことなんだよ。当たり前じゃないんだよ。私はさ…言えないまま死んじゃって、物凄く後悔したから…」
平子は琴乃の言葉を思い出していた
"あの時…死ぬ時、物凄く後悔したっ…どうして、いつか言うなんて思ってたんだろうって…"
「ちゃんと気持ちを伝えられたんだから…悪いけど、私が言うことじゃないのは分かってるけど…ゆっくりでいいから、紫苑のことは、諦めて欲しい…」
一護の返事も聞かず、琴乃は横を通りすぎ台所に向かった
「スマン、一護…」
さすがの平子もフォローを入れる
相当落ち込んだやろか…
そっと顔を覗き込む
「はぁーーー……っ」
下を向いて大量に息を吐いたかと思ったら、急に顔をあげて目に力が入った
「大丈夫…か?」
「琴乃の言う通りだよ。ガツンと言ってもらえて、なんか…目が覚めた気がする」
「そ、それは何よりや」
一護の目に、力が戻った
踏ん切りついたんやろか
良い方向に行くならええんやけど
「俺帰るわ。琴乃にありがとうって伝えておいてくれ」
「…気ィつけてな」
勝手口を出た一護は、空を見上げ、怪しい雲行きに帰り道を急いだ
一護を見送った平子は、琴乃が立つ台所へ向かった
「さすがに言い過ぎたんとちゃう?」
「うん。分かってる」