第61章 アナタが笑顔なら 後編
「ねぇ、紫苑と浦原さん、一緒に寝かせたほうが良いかな?」
いつも一緒に寝ている2人
きっと起きた時、1人だと不安に駆られるだろう
「んーせやけど、まだ2人気まずいままなんやろ?」
「あの2人でも、気まずくなることあるんだな」
「時々あるよー。ここまでなのは珍しいけど」
本当はまだ、全然諦められてなんかいなかった
ほんの少しの可能性にすがりついて、2人に気まずい空気が流れていることも、心のどこかでは嬉しいとさえ思ってしまっている
"俺は好きな女の、幸せを願える男になりたい"
俺は全く、浦原さんどころか阿近さんにも、敵いやしない…
「なんやまだ紫苑のこと諦められへんのかいな」
「ぅ…え!?」
唐突に核心を突かれて思わず間抜けな声を出した
階段を降りながら発せられたその言葉に、足を踏み外しそうになる
「真子、階段では止めてよね。一護転んじゃうよ」
「へいへい」
悪びれる様子もなく、相変わらずの曲がった腰で、相変わらずポケットに手を突っ込む平子
「顔に出てんで」
「そんな…いや、そんなことは…」
ある…
階段を降りきったところで考えこんでしまった一護を振り返る
「…俺は昔、紫苑に気持ち伝えて、フラれてスッキリしたんやけど…お前は時間かかりそうやな」
「一護…」
「やっぱり、諦めなきゃ…いけないんだよな…」
あれから随分経つのに、紫苑はもう浦原さんと結婚するのに
高校生の自分には、彼女を養う経済力も、全てを包み込む包容力も、何があっても護り抜く力も無い
あの人には、経済力も包容力も、護る力も充分すぎるくらいにある
好きなだけじゃ、ダメか?
俺じゃ…ダメか?
幸せにできない?
「無理だよ、一護には」
「え…」
「おい、琴乃…」
「私はさ、産まれた時から紫苑と一緒で、一緒に死神になった。誰よりも紫苑と一緒に居る時間が長いと思う」
琴乃の顔が変わりよった
いつもの楽観的な感じやなくて、いつになく真剣というか…