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With me

第61章 アナタが笑顔なら 後編



ぼんやりする視界に、彼女の悲しげな瞳が見えた

寂しげな声が聞こえた


「だから、あなたを殺して私があなたになるの。そしたらきっと喜助は、私を愛してくれるから」

「麻美…さん…聞いて」

「目障りなのよ、あなた」

「貴女を探して…いる人が…」


もう一度振り下ろされた短刀を、かろうじて掴んだ雪姫で止めた

衝撃と共に短刀が彼女の手から離れて飛んでいく

彼女は両手を紫苑の首に添えた

雪姫を握る手に力が入らない…


逃げなきゃ…

本気だ、この人…

身体に全然力が入らない

助けて…誰か…

助けて…喜助…さん


「苦しめ!死ね!私の喜助を奪った罰だ!死ね!死ね!死ねぇ!!」


怒りに任せて強くなる手

意識が朦朧としてくる

私、死ぬのかな…此処で…

まだ、喜助さんに謝れてないのに…

喧嘩したままなのに

ごめんね…喜助さん…


紫苑の瞳から、涙がこぼれ落ちた


「紫苑から離れてください」


彼女の喉元には、杖の柄が突きつけられていた


「聞こえませんでした?紫苑から離れろ、と言ったんス」


喉元に当てたまま力を込める


「かはっ…」

「今ここで、アナタの首をはねたっていい」


苦しくなった女は徐々に、紫苑の首もとの手の力を緩めた


「喜助…さ…」


意識が遠くなる…

ダメ…謝らなきゃ…ちゃんと…


「今だ、捕らえろ!」


聞いたことある声…

この声は…


部屋の中に何人もの黒装束を着た人たちが入ってくる

そしてあっという間に彼女は拘束された


「お疲れ様っス、砕蜂サン」

「今回の脱獄は完全に此方の非だ。情報に感謝する、浦原」

「待って…私、戻りたくない!助けて!喜助!私…あなたを愛してる…!誰よりも!」

「連れていけ」

「喜助!喜助!…喜助…」


砕蜂の一言で彼女は連行された


「もう二度と、出てくることはないだろう。それより紫苑は…」


砕蜂が声をかけたそこにはもう喜助の姿はなかった


「紫苑!」


壁にもたれかかる紫苑

まだ意識はあるようだ


「紫苑…」


怯えた瞳から、涙が溢れる

身体は小刻みに震えて、呼吸も安定してない


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