第61章 アナタが笑顔なら 後編
「あの、浦原商店って此処で合ってますか?」
第一印象は、紫苑に似てる
そう思った
長い黒髪を1つに結って、話し方、佇まい、声音
ずっと会いたかった紫苑に良く似ていた
だから、彼女が駐在任務に来たけど寝泊まりに困っていると訪ねて来たときも、追い返せなかった
「お世話になるので、これ良かったら」
彼女が持ってきてくれたお酒をテッサイと3人で飲み、随分強いお酒だったみたいだ
飲んだ感じはそんな風に思わなかったのに
それとも今思えば睡眠薬か何か…
そして眠りについた
テッサイはなんとか部屋で眠ったらしい
「喜助さん、喜助さん…」
夢の中で、ボクを呼ぶ声が聞こえた
「会いたかった…」
「紫苑…?」
なんで此処に紫苑が?
「…っ」
酒のせいか、頭がひどく痛い
視界もハッキリしない
けど、目の前に居るのは…
「喜助さん…ねぇ、キスして…」
「紫苑…本当に?」
ボクも会いたかった…
夢でも、現実でも良い
目の前に紫苑が居ることが、奇跡みたいで、ボクは彼女の頭を寄せてキスをした
「ん…もっと…」
ボクは貪るように彼女の口内を犯した
そして、いつの間にか体勢は逆転し、ボクは彼女を押し倒していた
「嬉しい…ずっと喜助さんに、触れたかった…」
「ボクも…」
彼女の着物をはだけさせ、首筋に唇を這わせる
「あっ…ん…喜助さん…もっと…」
「紫苑…紫苑」
「喜助さん…喜助…喜助…ぁっ」
そこでボクは違和感を覚えた
だんだんと、意識がハッキリしてくる
「違う…」
全然違う
綺麗な声も、髪の艶やかさも、肌の柔らかさも…
「紫苑はボクのこと…喜助とは呼ばないんスよ」
「え…」
「アナタ、誰なんスか?」
「あら残念、ばれちゃった。もう少しだったのに」
この喋り方
確か…
「アナタ…もしかして…」
「思いだしてくれた?喜助」
そう、確か100年前…
紫苑と出会う前に、何度か夜を共にした…