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With me

第61章 アナタが笑顔なら 後編



「あとは、安静にしていれば良くなると思いますよ」

「スマンなァ…虎徹チャン。わざわざ呼びつけて…」

「いえ。紫苑さん、また無理したんでしょうね」

相変わらずなんだから


「それじゃ私、仕事残してきちゃったのでこれで失礼しますね」

「ホンマに助かった…ありがとなァ」

「後で詳しく聞かせてくださいね」


彼女を見送ったタイミングで、喜助が漸く帰ってきた


「虎徹サンが、来てくれてたんスよね?」


覇気のない声

見るからに元気がない


「おー飛んで来てくれたで」

「紫苑のこと、ありがとうございました」


本来ならボクの役目なのに

胸がモヤモヤする

気分が悪い


「ちょっと、スミマセン…」


流しに駆けていった喜助

100年前にも、こんな光景を見たような…


「うっ……かはッ…」

「お前…」

「はぁ……はぁ…」


何度か嗚咽く喜助

思わず背中を擦る


「ダメっスね……紫苑に拒絶されると…身がもたない…」


100年前も、紫苑を残してきた自分を責めて、こんなんになってた…


「…紫苑な、精神世界で虚と闘っとる時、幻覚を見せられたんやって」

「幻覚?」


そういえば、紫苑のご両親が苦労したあの虚は幻覚や悪夢を見せると雪姫サンが言っていた


「1つは両親の幻覚。そしてもう1つは、喜助…お前とあの女がイチャついとる幻覚だったらしいで」

「アタシが…?」

「見た目も、感触も、匂いも…喜助そのもので、幻覚だと頭では理解しとる。現実であるわけがない…そう自分に言い聞かせて、お前に謝りに行ったんや」


そんな幻覚を見せられていたんスね…

辛かっただろうに…


「そこで幻覚だと思っとったあの女が居た…」

「そうだったんスか…」

「そんで極めつけはお前の無言の肯定や」


喜助は唇を噛んだ

あの時、正直に全てを話すのが正解だったのか

分からない…


「話してみ…」

「…アタシが紫苑を迎えに行く、少し前のことです」


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