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With me

第61章 アナタが笑顔なら 後編



心臓が早くなる

どうして?あれは幻覚のはずなのに…

現実に存在するの?

あの人が…


「紫苑?」


紫苑と平子に気がついた喜助が近寄ってくる


「出歩いて大丈夫っスか…?っと…ごめん…」


いつもの癖で紫苑に触れようとした

だけど拒絶されたことを思い出して、すぐに手を引いた


「喜助、その女…」


紫苑は固まって、声が出ないでいる

そんな紫苑に彼女が近づいた


「久しぶりね、西園寺さん。私のこと、覚えてる?」

「え…」


不気味な笑顔…

上から見下ろすような視線


「紫苑に近づかないで貰えます?」


紫苑と女の間に割って入った


「あら残念」


長い髪を風になびかせて、フッと小さく笑った

過去の記憶が甦る


「じゃあまたね、喜助」


そして横を通りすぎる時、紫苑に囁いた


「喜助は私のものよ」


そう言い残して去っていった

覚えてる…この殺気

昔、喜助さんと付き合い始めた頃に、同じ台詞を言われた

あの後、結局何もされなかったから、存在自体忘れていたのに


「なァんか、紫苑に似とったなァ…」

「紫苑、彼女と会ってたんスか?何時?何処で?」


訳が分からない

彼女は今でも喜助さんのことを?


「喜助さん…あの人誰…」

「…彼女が麻美さんです。覚えて…いますか?ボクが過去に関係を持っていた……」


物凄く言いづらそうに、喜助さんにしては小さな声で…


あの人が麻美さん…

私に殺気を放って囁いてきた

そして確かリョウ先輩の…



"喜助は私のモノよ。これからいっぱい愛してもらうの…"

"100年居なかった、アナタの代わりにね"


幻覚だったはずなのに、急に現実味を帯びてきた彼女の台詞

確かめるのが怖い

そんなはずはない

あれはデタラメな幻覚…


「変なこと聞いて良い?」

「え?」

「私が居ない100年の間に、彼女と何かあった…?」

「…」

「ないよね?なにもないよね?」


お願い

嘘でも良いから、ないって言って?

あれはやっぱりただの幻覚だったって…思えるように


「なんで答えないの?なんで否定してくれないの?」

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