第61章 アナタが笑顔なら 後編
「大丈夫。此処に居るから…」
喜助の手は、紫苑の手とその手に握られた斬魄刀を包み込んでいた
「…始めるね」
緊張した面持ち
精神を集中させる紫苑
しばらくすると、精神世界に意識がいったのか、座りながらもくったりとする紫苑
ボクは此処で祈り、見守ることしかできないのか…
紫苑の精神世界に干渉しようと思えば、恐らくできるだろう
中に入って助太刀することも
だけどこれは紫苑自身が闘わなければいけないことで
乗り越えなければいけないことで
きっと紫苑も、ボクが手を出すことを望んではいないだろう
ボクにできることは、紫苑が帰ってきた時のために安心して休める場所をつくっておくことだろうか
…─
「紫苑様」
「雪姫…」
相変わらず此処は美しい
たくさんの花が綺麗に咲いている
その中の唯ひとつの黒い花の前に、雪姫はいた
「この花が…」
「はい。触るのは、危険ですわ」
以前は遠目に見ただけだったけど、近くに来ると禍々しい霊気を感じる
「雪姫、私にできるかな…」
「もちろんですわ」
紫苑は頷いた
そして雪姫は、虚にかけた封印を解き、刀の姿に戻った
黒い薔薇だったソレは枯れ、花びらが落ち、砂のように細かくなり霧散した
そして現れたのは触手の生えた虚だった
「よくもワシを、長く閉じ込めてクレタナ」
低い声が脳に響く
「お前ガあの時ノ…あの死神ドモの子供か」
「そうよ…」
「あの死神ドモは実に滑稽だっタ!男のホウはいとも簡単にワシに取りつかれ、女のホウはワシと男の力を吸収したが故に、自分の子供にマデ苦しみを与えるコトになッタ!」
刀を握る手に力が入る
何度も呼吸をして落ち着かせる
「ソシテお前のその刀…厄介ダッタ。ソイツのせいでワシは長いこと封じらレテいたが、マサカそっちから出してクレるトハなァァ!」
「大人しく、消されてくれはしなそうね」
「幼いお前ニ浄化されカケた時はヒヤッとしたが…デキルノか?お前に!母親にデキなかったコトが!大した力も無いクセニ、ワシを取り込んだりスルカラ…工藤とやらに殺された間抜ケナ死神たちノ娘!」