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With me

第60章 アナタが笑顔なら 前編



「本当は俺が、幸せにしてやりたかった」

「阿近…」

「悔しいけど、浦原さんなら大丈夫だ。だから、絶対幸せになれよ…」


そう言って、阿近は紫苑を離した


「…ありがとう。私、喜助さんと出会ってなかったらきっと、阿近を好きになってたよ」


…その言葉だけで充分だ


「あ、今のは喜助さんには内緒ね」

「あぁ。…またいつでも来いよ」

「うんっ」


パタンと閉まったドアを、しばらく見つめていた


「やっと言えた…」


100年以上、かかったけどな…




紫苑、好きだよ





…─




浦原商店─



雪姫サンが、紫苑の中の虚を抑えている

その雪姫サンが離れた時はどうなるんだろうか

嫌、確か一度…

琴乃サンが亡くなった時

自分の首を斬ろうとしていた紫苑を止めて、そのまま斬魄刀を預かった

もしかしてそのせいで、余計に悪夢を?

少なからず要因の1つではあるだろう…


「喜助さん、ただいま」


頬杖をついていた喜助は、不意をつかれたように顎を落とした


「おかえり」

「喜助さん、ぎゅってしていい?」

「いいよ」


ツンと匂う薬品の匂い

開発局特有の匂い


「何かあったんスか?」

「…阿近に好きだって言われた」

「…そう」


彼の気持ちには、100年前から気づいていたけど、ついに伝えたんスね


「そしたら、無性に喜助さんに会いたくなって……」


泣いてる…?

小刻みに震える体を落ち着けるように、背中を撫でた


「会いたくなって…」

「うん…」


色々な、複雑な気持ちが抑えきれなくなったんだろう

両親のこと、雪姫サンのこと、阿近サンのこと


「…帰ってきちゃった」

「おかえり」


本当は1人になって考えたかった

西園寺の旧家にも行こうと思ったし、喜助さんと住んでいたあの部屋で、1人考え込もうかとも思った

けどきっと、阿近が止めてくれたんだ

あのままだと私、悪いほうに悪いほうに、いっちゃいそうだったから


「私、決めたよ」

「え」

「私の中の虚を、完全に消し去る」

「決めたんスね…」


紫苑は雪姫を呼び出した


「雪姫、私と一緒に…頑張ってくれる?」

「もちろんですわ」


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