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With me

第60章 アナタが笑顔なら 前編



この子はどこまで強いんだろう

一体今まで、どのくらい苦しんできただろう

また少し、苦しむことになるけど

今度こそ、解放してあげるから…


「喜助さん、傍に居てくれる?」

「当たり前じゃないっスか」


そして今日も、喜助さんの腕の中で眠った






─…





「はぁ…」

「なんすか阿近さん!元気ないっすね!?」


耳にキーンとくるような声で、俺と打って変わってこいつはご機嫌そうだ


「うるせぇ檜佐木」

「ため息なんて珍しいじゃないっすか」


紫苑に想いを伝えたし、すっきりするんじゃないかと思ってたけど、思いの外そうでもないらしい


「もしかして失恋したって本当っすか?」

「………」

「え、相手紫苑ですよね?」

「…なんで知ってる?」

「いや局の子たちが噂してたから」


そういやあの時、部屋の外に何人か居たような気がする


「阿近さんでもフラれちゃうんすね。浦原さんすげーな……」

「まぁ、100年前から分かってたことだから」

「それで落ち込んでたんすね」

「だからうるせーよ」

「なんなら俺と付き合います?」


心底嫌そうな顔で、はぁ?と口に出していないのに聞こえてきそうな顔がまたいい


「冗談っすよ!冗談!」

「本気だったら困る」

「きっと良い人現れますって!そうだ、今度飲み会計画しましょうか?」

「…今はいい」

「失恋の傷を癒すのは、新しい恋っすよ?」


100年の恋心は、なかなかそう簡単には癒えてくれない


「そのうちな」

「俺もそろそろ次の恋に進まなきゃっすよねぇ」

「お前はまだ何もしてないだろ?」

「阿近さんがフラれたくらいっすよ!?俺なんてカケラも望みないじゃないっすか!」

「まぁ、お前と浦原さんじゃ月とすっぽんだよな」

「ひっど!阿近さんひっど!」

「あの人は凄い人だよ…」


こりゃ阿近さんが立ち直るにはしばらくかかりそうだな


「阿近さんも充分凄いっすよ」

「そりゃどうも」

「ま、気が向いたらいつでも言ってください。かわいい女の子集めるんで」


悪いけど、まだしばらくそんな気にはなれそうにない

心に穴があいた気分とはこのことか


初めて、紫苑を抱き締めた

ずっと我慢してたのに

抑えきれなかった


離したくなかった


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