第60章 アナタが笑顔なら 前編
「喜助さん、ひよ里さんたちのところに行きたいんだけど…」
「え?あ、ハイ…」
「喜助さんも来てくれる?」
「行っていいんスか?」
「うん。私じゃ多分、上手く説明できないと思うから…」
今の紫苑の状態は、平子サンたちと同じ状態だ
彼らに会って、話してみたいんだろう
仮面のアジトに着くなり、紫苑は琴乃サンに泣きついた
「ちょ、どしたの?紫苑?」
「浦原さんに泣かされたんか?」
「喜助お前ェ!」
「ち、違いますって!落ち着いてくださいよ」
リサとひよ里に凄まれる喜助を横目に、やれやれと平子が声をかけた
「喜助、何があったんや?」
「…紫苑、話していいっスか?」
紫苑は琴乃サンに頭を撫でられながら、頷いた
…─
「なるほどなァ…」
「紫苑、私一緒に居たのに全然気づかなかった」
「私だって、雪姫に聞いて初めて…」
「工藤が言ってた、物心ついたときから時々支配されてたってのは、このことだったのね…」
涙がやっと引いた紫苑は、琴乃に肩を支えられ、その場に腰をおろした
「せやったら紫苑も虚化したったらえぇやん?」
「私たち、教えてあげるよー?」
リサと、いつから聞いてたのか白もひょっこり顔を出してきた
「アホか、リサ白。そんな自分の親の敵が中に居るなんて、胸糞悪いやろ」
「ひよ里の言う通りやで」
平子はハンチングを回しながら、リサと白に視線を向ける
「喜助はなんとかできないのかい?君の専門分野だろう?」
「うーん、そっスねぇ…」
あの時と同じ苦笑い
「ローズ、そんなことできたらとっくに俺らにやっとるやろ」
「紫苑はどうしたいの?虚に消えて欲しいの?それとも虚化して新しい力をつける?」
琴乃に聞かれた
答えは決まっている
「私はこの虚を消したい。でも、その為にまた雪姫が辛い思いをするのは嫌なの…」
「でも三日で終わるんやろ?」
「そうだけど…」
「ならやるしかないじゃん」
「琴乃…」
琴乃は私の肩を掴んで、私の目をまっすぐ見て言った