第60章 アナタが笑顔なら 前編
「遥の傍に居ちゃ駄目…かな?」
「俺の、傍に?」
「私も、心で遥を支えたい…」
支えさせて欲しい
「…いいのか?本当に」
「うん。身体も辛いし、もう決めたの」
それから1ヶ月
私も正式に除隊が認められた
そして、遥と結婚して紫苑という女の子が生まれた
雪姫は未だ、あそこで闘っている
時々雪姫の力が弱まると、刀から黒いモヤが出て近づく者を傷つける
力と力が拮抗している
それがひどくなってきた頃、部屋を1つ使い、雪姫を安置して、気休めにしかならないけど、名のある術師に清めてもらうようになった
何もしてあげられない自分が嫌になる
雪姫は、きっともう限界をとっくに越えている
「菫、術師の方がお越しになった」
「分かりました。市松さん、東雲さん、紫苑をお願い」
「「承知いたしました」」
紫苑は歩けるようになったことが嬉しくて、近頃は少し目を離すと驚くような距離を移動していたりする
東雲さんの娘の琴乃ちゃんも一緒になって、使用人たちも手を焼いてるみたい
紫苑に振り回される使用人たちを微笑ましく横目に見ながら、遥と共に雪姫のもとへ行く
いつもお清めの後は術師の体に傷が無数にある
そろそろ快く受けてくれる術師も少なくなってきた
近頃では呪われた斬魄刀…なんていわれてるらしい
「私の力では、この程度かと…申し訳ありません」
「いえ、ご尽力ありがとうございました」
部屋を出て、使用人が再び戸を閉める時、叫び声が聞こえた
「いけません!紫苑様!」
咄嗟に振り返ったそこには、雪姫の部屋に走りながら入っていく紫苑の姿があった
「ダメ!紫苑!!」
雪姫に触れたら…!
走り出して部屋の中に入った時にはもう遅くて、紫苑は刀に手を伸ばしていた
「紫苑!!」
間に合わない…
そして紫苑が雪姫に触れてしまった
その時、紫苑が触れたところが青白く発光し、部屋の中を光で包んだ
「なに…これ…」
眩しさを腕で隠しながら紫苑に近づく