第60章 アナタが笑顔なら 前編
「ねぇ、遥の霊力だけ取り除けないの?遥、霊力が戻らないみたいで…」
すると、雪姫は難しく少し悲しそうな顔をした
「それも試しましたが…」
「駄目…なんだ」
「申し訳ありません」
「何言ってるの。雪姫のせいじゃない」
「もう少し、頑張ってみますわ…」
私はうん、とだけ返事をして意識を現実に戻した
…─
それから遥は依願除隊が正式に認められて、西園寺家に戻った
色々な提案をされたらしいけど、プライドのほうが大事だったみたい
あの夜から約1ヵ月
私はある決心をした
「話があるの」
今度は私から
遥の屋敷にはもう何度も訪れていて、私が突然訪問したって快く迎えてくれる
「菫…」
私の珍しい顔に少し驚いてるみたい
「部屋でいい?」
「うん」
遥の部屋に入ると、勉強道具がたくさんあった
「あぁ、それは…力がなくても自分を守ったり、できることはあるかもしれないと思って」
「やっぱり、戻らないんだね」
新しい道を自分なりに進んでる遥が、少し眩しかった
「それで話って?」
「私も、依願除隊しようと思うの」
「何、言って…」
心底驚いたようだ
冷茶を注ぐ手が固まって、溢れだす
「溢れてるよっ」
「あっと…っ!」
死神をやめて、少しあの頃の勢いが小さくなったように見える
「…どうして、菫まで…」
「雪姫がね」
「雪姫が…」
「使えないの」
「使えないって…どういうことだ?」
一緒に卍解の修行をした
私の斬魄刀の能力は、遥だって知っている
「だってあれからもう随分…」
「自分を、責めないでね」
あの時とまるで逆
あの時の遥とおなじことを言っている
結局あれから、雪姫は頑張ってくれたけど、虚と霊力の混ざり合ったものを浄化できなかった
私に手伝えることは、何もなかった
「そんな…俺の霊力のせいで…」
「だから、自分を責めないで」
「……うん」
あの時の私とおなじ顔をしている
「斬魄刀が使えないなら、例えば鬼道衆は?菫は、鬼道が得意だし…」
それも一瞬頭をよぎった
「私…」