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With me

第60章 アナタが笑顔なら 前編



「紫苑!」

「ふぇ…」


びっくりして泣きそうな紫苑を抱き上げる

しばらく発光してた光は次第に落ち着きを取り戻した

そして現れたのは


「雪姫…」


隣に来た遥に紫苑を預ける


「お久しぶりです。菫様、遥様」

「どうして…」

「紫苑様のおかげですわ」

「どういうことだ、雪姫?」


雪姫が紫苑に優しく触れる


「紫苑様の力で、私の中にあった虚は浄化され、遥様の霊力は霧散したようですわ」

「そんなことが」

「紫苑が…?」


確かに刀からはもう禍々しいものは感じない

私が触れてもなんともない


「紫苑様、ありがとうございます」


少し雪姫を警戒していた紫苑は、雪姫の笑顔に安心したのか手を伸ばした


「雪姫、良かった…私っ…何もできなくてごめんねっ」

「俺も…俺の力のせいで、すまなかった」

「やめてくださいませ!私は今、こうして無事に此処に居りますから」


泣き崩れるように、膝を折った


「あと、申し上げにくいことなのですが…」

「え?」


雪姫もわりとハッキリした性格で、言いたいことは言うような子だった

その子がこんなに言いづらそうにしているのは珍しかった


「私の中から虚は居なくなったのですが、間一髪逃れた一部が…恐らく紫苑様の中に…」

「うそ…」

「紫苑の中に虚が…?」


何も変わらない

何も感じない

けど、雪姫がいうのだからきっと…


「とても小さなモノなのでしょうけど、紫苑様を気をつけて見てあげてくださいませ」

「わかった…」


そして私たちも、雪姫も気づかなかった

紫苑とは別に、もうひとつ虚の一部が抜け出していたことを…






…─






それからしばらくは何事もなく、平穏な日々を過ごしていた

死神を引退した私は、雪姫をまた使えるようにはなったものの、紫苑が小さいこともあって携帯するようなことはなかった

雪姫は元々気の強い性格で、自分の気に入らない者が触れると電流を流してくることがある

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