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With me

第60章 アナタが笑顔なら 前編



流魂街の住民の何人かは犠牲になってしまったが、幸いにも、討伐隊の中で命を落とした者は居なかった

厄介だった虚が居なくなり、流魂街はまた平穏を取り戻していた





「菫…話があるんだ」


こんな顔をした遥を見たことがない

いつもハッキリと物事を言うのに、こんなに言いづらそうにしているのを見たことがない


「場所、変えようか…」


そして六番隊で一番高い屋根に登った


「どうしたの?」

「うん…実は、副隊長の話が来た…」

「え?そうなの?凄いじゃん!おめでとう!」

「断ったんだ…」

「え、どうして?」


あんなに副隊長に憧れていたのに

その為に鍛練だって欠かさず…

なのに、どうして


「…菫、自分を責めないでくれよな」

「なんの、こと?」

「俺はあの虚に憑かれた時に、霊力のほとんどを吸われた。そして、その霊力は恐らく虚と一緒に…」

「もしかして、雪姫の中に…?」


遥は頷いた


「霊力が、戻らないんだ。全く無い訳じゃないが、平隊員とおなじくらいだと思っていい…」

「そんな…」


遥の霊力も一緒に吸ってしまったなんて…

そんなこと…


「私の、せいで…」


涙が出そうになる

遥の手が、頭を包む


「だから、自分を責めるなって」

「…ごめん」


遥は優しく笑って、手を離した


「俺、依願除隊しようと思うんだ」

「え…」

「今さら平隊員になんか戻れないし、霊力も戻らないなら…俺が此処に居る意味は無い…」

「でも、霊力がなくたって隊員として、他にいくらでも道はあるんじゃ…」

「虚が出たって前線に立てない…それは嫌なんだ。俺の、プライドかな…」


昔から、責任感が強くて、仕事に誇りをもっていた

そんな遥の決断を、私は受け入れるしかなかった


「そっか…」

「あともうひとつ話があって…」

「うん」


さっきよりも暗い顔をして、何度も息を吐いて発せられた言葉は…


「俺たち、別れよう…」


言葉がすぐに出てこなかった

頭が真っ白になるってこういうこと?

俯いたままの遥から、目が離せなかった


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