第60章 アナタが笑顔なら 前編
「西園寺三席!虚は、何処に?」
全く気配が分からない…
遥は一体何処を…
「菫さん!!!」
え?
なん…で…?
背中を斜めに斬られた…
まさか、虚が後ろに…?
まさか…
「西園寺三席!何をしているんですか?!」
私を斬りつけたのは、そう…
「遥…?」
「何をしているお前たち!虚はコイツだ!実体を見せた!全員でかかれ!」
「西園寺三席、何を言っているんですか?!」
「あなたが今斬りつけたのは、菫さんですよ!!」
どう、なってるの…?
遥は私を虚だと思っている?
実体?そんな馬鹿な…
「おかしなことを言っているのはお前たちだろう?!菫はテントの中に居るはずだ!早く虚を倒すんだ!」
私のこと、見えてない…?
「遥!私は此処よ!」
惑う隊員たち
「お前たちがやらないなら俺が!」
指揮官を信じるべきか
それとも自分たちがおかしいのか…
向かってくる遥に、隊員たちは叫んだ
「…何故お前たち虚を守る…っ?」
私を守るように刃を交えた隊員たち
「菫さんは虚じゃない…虚は、あなただ!西園寺三席!」
「俺が虚だと…ふざけるな!」
遥とこの隊員たちじゃ、実力に差がありすぎる…
あっという間に2人は倒れ、騒ぎを聞き付けたテントの中の隊員たちも、次々に遥に向かっていく
「何故、虚がこんなに…?!」
幻覚を見せる虚…
そうだ
何度も耳にしたじゃない
遥は乗っ取られて、私たちが虚だと、幻覚を見せられているんだ…
ついに他の隊員たちまで虚に見え始めたらしい
でもどうすれば…実体をおびきださなければ、手を出せない…
その間にも次々と隊員はやられていき、残るは私だけになった
「あとはお前だけだ。お前、菫を何処にやった」
「遥!気づいて!私が菫よ!」
「くそ!忌々しい声め」
私の声が届いていない…