第57章 なんかあったら言えよ
「俺は紫苑を幸せにしてやりてぇ…この手で」
2人の様子を静観する檜佐木
「…そんなこと、数えきれねぇくらいあるさ」
一護に測定の器具を装着させながら、阿近は静かに答えた
「だったら…!」
「100年、見てきたんだ。紫苑と浦原さんを」
装着のチェックをする
「黒崎も今度ちゃんと、見てみるといい。浦原さんの隣に居るときの紫苑、すげー幸せそうだから」
「……っ」
「俺は好きな女の、幸せを願える男になりたい」
測定を開始すると、一護は透明の円柱の筒に包まれた
「早く帰れよな、檜佐木」
装置を微調整しながら、ソファの檜佐木に声をかけた
「カッコいいっすね、阿近さん」
良いものを見た、というような良い表情で檜佐木は技術開発局を出た
…─
「あ、おかえりなさい。喜助さん」
「ただいま」
挨拶も早々に、紫苑は仕事部屋にこもってしまった
その行動を不思議に思いながらも、居間に上がった
「帰ったか、喜助」
「夜一サン、紫苑元気ないみたいっスけど、何かありました?」
「さすがじゃの」
それから夜一サンに、今日起きた出来事を聞いた
黒崎サンが来たこと
井上サンが来たこと
涅サンに電話で怒られたこと
それで今、急いで書類を終わらせていること
「もうすぐ終わりそうじゃから、それまではそっとしておいてやれ」
「考えすぎてなきゃいいっスけど…」
色々と重なって、あの子のことだ
また体調を崩さないといいけど
「ちょっと、心配っスね」
特に気になるのは井上サンのことだ
早く誤解を解いてあげないと、あまり良くない方向に進みそうだ
「今日、琴乃サンは?」
「琴乃は平子のところじゃ」
「てことは帰ってこないっスね」
尚更ボクが慰めてあげないと…
「喜助、顔が気持ち悪いぞ」
「やだなァ、夜一サン」
「終わったみたいじゃぞ、さっさと行ってやれ」
「それを早く言ってくださいよ!」
喜助が紫苑の元に向かうと、丁度部屋からでてきた
「喜助さん、送信機使うね」
「あ、ハイ」
場所をボクの研究室に移し、出来上がった書類を向こうに送っている
慰めるタイミングを失ってしまった