第57章 なんかあったら言えよ
「男性死神協会で使いたい?」
頭に黒いサングラスを乗せた修兵が、阿近に何やら頼み込んでいる
「そっス!どこでもいいんでお願いできないっすか?阿近さん!」
阿近は面倒臭そうに頭をかいて、ん~と渋い返事
「生憎今空いてる部屋は…」
「お願いしますよぉ、阿近さん。見つからないと会長に…」
「あ、阿近さん」
声のしたほうを向くと
「黒崎じゃねぇか」
「あぁ、来たか」
「檜佐木さん」
黒崎一護が立っていた
「珍しいな、こんなところに。どうしたんだ?」
「いや、浦原さんに行ってこいって言われて…」
その言葉を聞いて、檜佐木は阿近を見る
「あぁ聞いてる。まずこれに記入して…」
と、まるで病院の初診の時に書かされるような問診票を手渡された
「漢字が多いんだけど…」
「分からないところは聞いてくれ」
むしろ分かるところのほうが少ないんですけど…
「聞いているのかネ!紫苑!」
一護が問診票にペンを走らせた矢先、大きな怒鳴り声が聞こえた
「おい!聞いているのかネ!紫苑!」
再び聞こえた怒号
知った名前に3人は反応する
「全く生意気な小娘だネ。あの調査書類が送られてきてないヨ?今日までと言ったはずだヨ?一体今まで何をしていたんだい?」
更に声が大きくなるマユリ
「電話の相手、紫苑ですかね?」
檜佐木が阿近に聞く
「ん?あぁ…多分な」
「そういや紫苑は十二番隊だったっけか」
電話の内容が気になりつつも、一護は問診票を書き続ける
「しっかりし給えヨ!」
語尾も言いきらないうちに、一方的に切ったらしい
辺りが静まり返る
マユリは目に入った阿近に鋭い目線を投げた
「お前はやっぱり紫苑に甘すぎるヨ!阿近!」
「すんません…」
頭から煙を出しそうな勢いでマユリは部屋を出ていった
「涅隊長…怒ると恐ろしいな…」
「俺、帰りたくなってきた…」
その時阿近の伝令神機が鳴る
「紫苑か。どうした」
阿近から発せられた名前に、2人は先程よりも強く反応する
『阿近…あの、ごめんね。マユリさんから電話きちゃった』