第57章 なんかあったら言えよ
珍しく喧嘩する2人に驚き、乱菊は巻き込まれる前にと、そろりそろりと部屋を後にした
「何に怒ってるんスか?言ってくれないと分からないっスよ」
紫苑は更に頬を膨らませて黙り込んだ
見かねた阿近が理由を説明する
「アンタが女にデレデレしてっからだろ?」
「デレデレ?アタシがいつ女にデレデレしたんスか?!」
「さっき!そのモニターに映ってた!」
喜助はついさっきの出来事を思い出した
モニターに映っている場所からして、本当についさっきの出来事
「あぁ、アレっスか…」
「アレって何よ…ばっちり見たんだから!喜助さんが若い女の子にデレデレしてるところ!」
全くこういうとき技局の監視モニターは厄介だ
現に今、こうして紫苑を不安にさせている
「あの子たちは紫苑のこと聞いてきたんスよ?」
「……へ?」
さぁどんな言い訳をしてくるかと思ったら、想像しない答えだった
「な、なに?私のことって」
「紫苑に憧れてるみたいですよ、あの子たち。どんな人かとか色々聞かれて、嬉しくなっちゃって紫苑のこといっぱい話してたんス」
「え、じゃあ…あの子たちにデレデレしてたわけじゃないの?」
「当たり前じゃないっスか」
紫苑は自分の勘違いに頬を染めた
「なんだよ結局惚気話しかよ。俺書類配ってくるんで」
阿近はため息をつくと、あとはご自由にと言わんばかりに別室へ姿を消した
「不安にさせちゃったみたいで、スミマセン」
「私も、勘違いしてごめんなさい」
ふふっと2人は笑いあった
「さ、帰りますか」
「うん!」
書類を届けに行く途中、阿近は仲良さげに手を繋いで歩く2人を見た
…─
一護は再び浦原商店に来ていた
「ちょっと話せるか?」
ちょうど店先に居た紫苑に声をかけた
紫苑は一瞬顔を強ばらせたけど、すぐ元の顔に戻った
「あ、うん…えと、上がってちょっと待っててくれる?」
そうすると紫苑は店奥へと消えた
やっぱり警戒されているんだろうか…
胸がズキッと痛む
罪悪感と、悔しい気持ちと、まだ好きな気持ち
心のなかで渦を巻いてため息ばかりがでてくる