第9章 私に、だけ…?
「ほぉ…喜助に誘われたのか」
その間も夜一のニヤケはとまらない
「夜一さんなら浦原隊長の好みとか知ってるかな…と思いまして…」
「恋する乙女じゃのぉ」
「こ、恋っ…やっぱりこれって恋なんですかね…!私はただ気になってただけで、その好きとか…そんなんじゃ…でもこないだ無意識に好きだって思って…!じゃなくてっ…あぁ!もう私何言ってんだろ!」
「紫苑…大丈夫かの?」
夜一は、一人であたふたする紫苑をヤレヤレといった感じで見る
「好きなんじゃろ…喜助のことが」
それまで、ジタバタしていた紫苑の動きが止まる
「……好き…みたいです」
「全く喜助が羨ましいわ…上手くいくと良いな。応援しておるぞ」
それでのぉと夜一はいつもの定位置に戻る
「喜助はそうじゃのぅ…着物は白が好きじゃ。紅は桃色かの。それから上目遣いに弱い。あとは甘えられるのが好きみたいじゃの…それから…」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
紫苑は急いで紙に書き取る
この2人は時間の問題じゃの…
必死に書き留める紫苑を見ながら夜一は思った
夜一さんに教えてもらったことを思い出しながら、紫苑はデートの日を楽しみに待った
…─
「紫苑サン紫苑サン」
「あ、浦原隊長、お疲れ様です」
「はいこれ」
そこには喜助に頼んだバラバラたったはずの写真
「なおったんですね!ありがとうございます!琴乃に渡してきます!」
紫苑が駆け出そうとしたのをちょっと待って、と喜助に制止される
「もうひとつ渡したいものがあるんス」
手を出して、と言われた紫苑は写真を持っていない方の手を差し出す
ポンと置かれたのは小さな透明の包みに入った色とりどりの砂糖菓子
「え、これ」
「ちょっと現世に行ってきたからお土産」
「いいんですか?嬉しい…凄く綺麗ですね」
「金平糖、って言うお菓子みたいっス。紫苑サンこういうの好き?」
「はい!星みたいでかわいくて…食べるのもったいないです…」
「喜んでくれてよかったっス」
じゃあねと浦原隊長は去っていった