第9章 私に、だけ…?
「相手は紫苑か」
「…なんでもお見通しっスね」
「何年お主と居ると思っておる」
喜助はだるそうに書類に判を押していく
「ボクが色んな女の子構ってるって思われてるんス…」
「間違いではないじゃろ?」
「してないっスよ!……今は」
ふーん…と夜一は最後の言葉に心の中でニヤついた
「ボク、紫苑サンのこと…好きなんスかね」
「見てたらわかるぞ」
「恋なんて初めてなんスけど…」
判子を置き、頭を抱える喜助を夜一は微笑ましく見ていた
…─
数日後─
紫苑は書類を配りに二番隊にきていた
「書類なら私が預かりますが」
「すみません、隊長に直接渡すものですので」
「隊長なら奥にいますよ」
嘘をついた
夜一さんと、話したかったからだ
隊首室に向かうと、襖を開ける前に声をかけられた
「紫苑か、入ってよいぞ」
「失礼します」
中には夜一さん1人だけだった
「紫苑、お主も色々と大変だったようじゃの…」
「もう大丈夫です。ご心配ありがとうございます」
そう言いながら夜一に書類を渡す
「あの…」
「ん?なんじゃ」
「夜一さんは、その…浦原隊長と仲良いんですか?」
「仲が良いというよりは、昔馴染みなだけじゃぞ」
書類に目を通しながら紫苑の問に答える
「喜助がどうかしたのか?」
夜一がニヤリと笑うと紫苑は頬を赤らめた
「聞きたいことがあって…」
「ほぅ、言うてみぃ」
「う、浦原隊長って、どんな女性が好きか知ってますか…」
夜一は紫苑を見て動きをとめる
「どんな…とは?」
あ、えっと…と紫苑は手を後ろに組み、下を向き目をあちらこちらに向けている
「例えば…服装とか、お化粧とか…仕草とか…そういうの、あるのかなぁって…」
「どこかに行くのか?」
「その……」
デートに…
凄く小さい声はしっかりと夜一の耳に届いていた
紫苑の顔は更に赤くなり、両手で頬を隠す