第56章 愛されてんだな、お前
後頭部に手をやり、ヘラヘラニヤニヤと頬を赤らめながらデレデレしている男に、ひよ里は心底嫌そうな目線を向ける
「もしかして浦原さん…ついに!ついに決めたんですね!」
「あ、えっと…」
目をキラキラさせて喜助を見る琴乃
喜助はさっきよりも赤くなった頬をかいた
「実は…紫苑にプロポーズしようと思ってます」
琴乃はわぁっと頬に手をやった
「アカン!認めへんで…っ」
ひよ里は地面をバンっと叩き、不快感を顕にした
「ひよ里さん…」
「お前みたいな胡散臭い駄菓子屋に、紫苑のことホンマに幸せにできるんか?!あんなエェ子がなんで喜助なんや!100年たっても納得いかへん!他のみんなが認めたってウチは認めへん!」
物凄い剣幕のひよ里を抑えたのは
「何騒いどんねん、ひよ里」
「邪魔すんなや、ハゲ!」
「真子お帰り」
帰宅した平子は騒がしいアジトを不思議に思い、足を早めた
そこには喜助がひよ里と向かい合って、ひよ里が早口で捲し立てていた
「えぇ加減認めろや、ひよ里。紫苑にとっての幸せは、喜助と居ることや。分かってるやろ?」
「……っ」
「喜助なら、紫苑の着るモンも食べるモンも住むところも不自由させへんよ」
平子は喜助に目線を移す
「もちろんっス。紫苑のこと、一生幸せにします。ひよ里サンにちゃんと認めてもらって、紫苑と結婚したいっス」
ひよ里は悔しそうに拳を握りしめた
「ひよ里」
「ひよ里さん…」
「ひよ里サン…」
拳が震えるひよ里、次第に体全体が小刻みに震える
ひよ里はくるっと背を向けた
「…紫苑のこと悲しませたら、ぜぇっったい許さへんからな!!」
その言葉にみんなが笑顔になった
「ありがとっス、ひよ里サン!」
…─
喜助が商店に戻ると、一人の青年が座っていた
「おや、黒崎サン」
どことなく警戒したような、でもいつも通りの声を心がけた
紫苑はまだ、尸魂界から帰ってきていないらしい
「浦原さん!待ってたんだ!」
すると一護は手をつき、頭を下げた