第56章 愛されてんだな、お前
第56章 愛されてんだな、お前
「イヤな予感がする…」
足を組み、頬杖をついて苛立ちを現すように指を小刻みに叩いているのは、猿柿ひよ里
「ひよ里ー、煎餅はよ食べんと無くなってしまうで」
「リサ食ってエェで」
煎餅を食べていることからして、おそらく午後の3時あたりだろうか
「なんだひよ里の奴、食わねぇなら俺が貰うぞ」
拳西が煎餅に手を伸ばすと、ベシッとリサの手が拳西の手を叩いた
「白も食べたい~」
「なら白、俺のやるよ」
羅武から煎餅を貰って満足気な白は、そのままひよ里のところへ向かった
「なんの予感がするの?」
ひよ里の背中に寄りかかりながら、ひよ里の視線の先を白も見つめる
「イヤーな予感や…」
ひよ里は出入口を睨み付けながら、眉間に皺を寄せた
人影がひとつ
出入口に浮かび上がる
「どォも~、こんにちはっス」
飄々とした様子で現れた喜助を、ひよ里は睨み付けた
「なんの用や、こないなところまで」
「そう警戒しないでくださいよ。ハイ、手土産っス」
商店で一二を争うお菓子を、ひよ里に寄りかかっていた白に渡した
「わぁい!ありがとうー!」
他のメンバーに持っていった白と入れ替わるように、違う人影が現れた
「あ、浦原さん。こっち来るの珍しいですね」
「琴乃サン、平子サンは居ないみたいっスね」
「真子はバイトです。あ、でももうすぐ帰ってくると思いますよ」
お茶持ってきますね、と琴乃がいなくなった
「で、なんの用や」
「お願いがあるんスけど…」
…─
「紫苑じゃねぇか」
「お疲れさま、阿近」
四番隊で検査を受けたあと、紫苑は技術開発局に来ていた
「体調崩してるって聞いたけど、もういいのか?」
「うん、もう平気」
相変わらず固めの応接ソファに座って、レポートを書いている阿近に目線を送る
「こないだちゃんと話せなかったなぁって」
過去から戻ってすぐ、阿近と顔を合わせたものの喜助さんに連れられて、ほとんど話すこともできなかった