第9章 私に、だけ…?
紫苑サンと初めて会った時から、どこか心を奪われている気がする
ふとしたときに頭に浮かんで、他の女性なんかもう抱く気にならなかった
こんな気持ちは初めてだ
やっぱりボクは…
…─
「紫苑ーおはよー」
「琴乃、おはよ」
「はい、これ!」
ドンっ!と目の前に書類の山を置かれた
「なに、これ?」
「紫苑が休んでいた間に溜まった仕事!今日はそれ片付けてね!じゃね!」
こんなに…
紫苑は上から適当に2、3枚をヒラっと捲り、眺めながら呟いた
これは多分琴乃の優しさ…
親友だからわかる
1日座っていられる仕事を任せてくれたんだよね
紫苑は山積みの書類に取りかかった
…─
「なんか今日、隊長元気ないよね?」
「うん、私も思う」
隊首室から出てきた十二番隊の隊員たちが話している
それを耳に入れ、夜一はその隊首室へと向かった
「相変わらず此処は匂いがキツいの」
なら無理して来なくていいのに、といつもなら嫌味の1つでも返ってくるのじゃが…
「どうやら本当のようじゃの」
しばらく経ってから喜助は夜一の存在に気づいた
「居たんスか…」
「頼まれていた調査書類じゃ。管理に気をつけるんじゃぞ」
「あぁ、助かります」
喜助は書類を受けとると、パラッと眺めただけで机の横に置いた
「あれほど欲しがっていたモノじゃろうに」
「ん、あぁ…そっスね」
「…恋煩いか」
喜助は目を丸くした
「初恋の時と同じ顔をしておるぞ」
「だからボクの初恋は…」
「失礼しまーす。隊長、今日までの書類です」
その時隊首室の扉が開き、隊員の一人が入ってきた
隊員は夜一に気づき、挨拶をする
「それじゃ、隊長。よろしくお願いします」
「はい、ご苦労様」
隊員が去ったあと、再び夜一と二人になった喜助は無意識にため息を吐いていた