第54章 本気になる前にやめとき
「おやァ、珍しいっスね。お久しぶりです。虎徹サン」
「すみません、突然」
「紫苑の見舞いってとこですかね?」
紫苑のことに関しては、勇音に絶対の信頼を寄せる喜助
彼女が診てくれるなら、一安心できそうだ
「心配で来ちゃいました…紫苑さん、どんな状態です?」
「今丁度起きてますよ。二階にいますから、どうぞ」
喜助は勇音を連れて二階へと上がった
…─
「んだよ、平子!紫苑の見舞いに来たってのに」
イラっとしてるのが表情から良く分かる
平子はそんな一護を気にも止めず、手にもっていたコーヒーを飲み始めた
「しゃァから、虎徹チャンと積もる話もあるやろ。あの事件以来やし、邪魔せんとき」
「俺だって…」
「 邪 魔 せ ん と き 」
「……わーったよ」
…─
「紫苑さん!」
部屋に入るなり紫苑に駆け寄った
「え?勇音さん?」
驚いた
滅多にこっちに来ることがない彼女が、今目の前にいる
「心配で来てくれたみたいっスよ。アタシは下に居るんで、ゆっくりしていってくださいね」
「ありがとうございます!」
喜助は部屋を出て、階段を降りた
「わざわざ来てくれたの?」
「すみません、急に押し掛けちゃって」
「ううん、来てくれて嬉しい。昨日顔出したかったんだけど…ごめんね」
「気にしないでください!自分の体調を一番に考えてくださいね」
すると勇音は紫苑に抱きついた
「勇音さん?」
「ずっと心配してたんです。無事で良かった…」
その言葉に紫苑の涙腺が緩んだ
風邪だからだろうか
いつもより涙もろくなってる気がする
「ありがとう…っ」
…─
「あれ浦原さん、戻ってきたんですか?」
「うん、まぁ。女の子同士で話したいことも、あるじゃないスか」
下に降りると琴乃サンが掃除をしていた
家事全般は使用人だったこともあり、本当に手際が良い
ずっとテッサイに任せきりだったから、彼も喜んでるみたいだ
「ちょっと残念そう」
ふふっと笑った琴乃に、喜助は少しだけ唇を尖らせた