第9章 私に、だけ…?
第9章 私に、だけ…?
翌日─
今日は復帰の日
気合いを入れて早く自室をでてしまった
さすがにまだ誰も来ていない…か
「沙也加…さん…」
1人静かに荷物をまとめている沙也加さんがいた
あぁ今日、隊を離れる日なんだ
目が合ったと同時に、沙也加は荷物を持ち紫苑のほうへ向かってくる
「あ…の…」
沙也加は何も言わずに紫苑の横を通り過ぎた
すぐに紫苑は振り返り叫んだ
「お世話になりました!」
一瞬沙也加は立ち止まったが、またすぐに歩きだした
紫苑は見えなくなる沙也加の背中を見つめていた
「気にすることないっスよ」
「浦原隊長!」
後ろから急に声をかけられて振り向く
「彼女は自分から此処を離れると決めたんスよ」
自分から?でもそれはきっと…
「でも本当はやっぱり此処に居たかったんじゃないでしょうか…隊長の傍に…」
聞いた話ではあの一件以来、沙也加さんへの風当たりは強くなり、隊に居づらくなっていたらしい
「来るもの拒まず、去るもの追わず」
「え?」
「あんまり考えすぎると疲れちゃいますよ」
浦原隊長もあの時はあんなに怒っていたけど、本当は沙也加さんをそのまま十二番隊に居させたかったんじゃないかな…
「浦原隊長…」
「はい?」
「女性も来るもの拒まず、なんですか?」
「……え」
喜助の目が点になる
「あ、いや…隊長って色んな女の子に手を出してそうだから…」
「…やだなぁ。そんなワケないじゃないっスかぁ」
前に琴乃が女遊びが激しいって言ってたし、あり得なくないよね…
「紫苑サンにそんな風に思われてるなんて心外だなぁ」
「あっ、いえ…そういうわけじゃっ」
「ボクが今気になる女性は一人だけっス」
急に耳元で囁かれてドキッとする
思わず手で耳をおさえる
「それは…」
「おはようございます!」
「おはよーございます」
次々と隊員が出舎してくる
隊長は無理しないようにねと私に言い残して去っていった
"それは…"
なんて言おうとしていたんだろう…
隊長の気になる人って誰なんだろう…
私、だったらいいのに…