第52章 今、誰の隣に居ますか?
涙腺が熱くなる
"紫苑…会いたい…
早く…帰ってきて…"
そこでメッセージは終わった
最後に鼻を啜る音が聞こえた気がした
「私も…会いたいっ」
紫苑は僅かな希望を抱いて、発信ボタンを押した
…─
夕方─
仕事を終えた死神たちが帰宅を急ぐ
技術開発局からも、半分ほどが姿を消した
「やっと現世にいったと思ったのに、もう帰ってきてしまったのかネ」
「せめて手がかりのひとつでもあれば…」
阿近も自分の思い付く限りのことを試したが、結果は空振りだった
その時喜助が放り出していた伝令神機の画面が光った
阿近の位置からは表示された内容まではわからない
「鳴ってますよ」
どうせまた放置するんだろう…と阿近がそれを取ろうとすると、画面の名前に固まった
「浦原さん…これ…っ」
喜助も目を見開き、伝令神機を手にすぐに通話ボタンを押した
胸が高鳴る
こんなことがあるのだろうか…
「紫苑!」
少しの沈黙
僅かに息遣いが聞こえる
『……喜助…さんなの?』
震えているその声は、間違いなく、愛しい紫苑の声だった
喜助はヘナヘナと、椅子に座り込んだ
「そっスよ……紫苑…」
喜助の目が震える
「本当に、紫苑なんスね…」
『うん…っ』
受話器の向こうで泣いているのだろうか
震える声がする
抱き締めてあげたい
この電話の向こうに紫苑がいる
「今、何処にいるんスか…」
『今…』
目を見開いて受話器を置いた喜助は、物凄い速さでキーボードを叩き始めた
…─
今起こったことが信じられなかった
ただの思いつきだった
留守電が入っていた
だから、もしかしたら繋がるんじゃないかと思って
喜助さんに電話をした
『待ってて…すぐに迎えに行くから』
やっと、会える…
信じてた
でも、どうやって此処までくるんだろう…
でもきっと、喜助さんならなんとかしてしまうんだろうな…
涙が落ちそうだったのを、必死に堪えた