第52章 今、誰の隣に居ますか?
「どないした?疲れたか?」
琴乃は首を横にふる
「私、昔も今も真子の隣に居れて幸せだよ」
琴乃を包むように抱き締めて頭を優しく撫でると、珍しく大人しくしてる
「大分デレるやんけ」
「ねぇ、真子は幸せだった?」
「当たり前や。幸せすぎて怖かったわ」
ははっと笑う琴乃の顔を見ようと、体を離そうと力を入れた
「待って。このまま」
と琴乃はまた深く、平子に抱きついた
「……好き」
「…今なんて…?」
小さいけれど確かに聞こえた…
琴乃の気持ち
「大好き…真子…」
肩が揺れているのがわかる
「あの時…死ぬ時、物凄く後悔したっ…どうして、いつか言うなんて思ってたんだろうって…」
腰にまわした手に力が入ってる
「明日が突然来なくなるなんて…死神だったら良く分かってたはずなのに…!」
「ちょっと落ち着きィ…」
「真子、私…っ」
「もう喋んな」
琴乃の口を塞ぐと、ようやく体の強張りが取れていく
唇を離すと流れた涙をそっと指で拭う
「大好きだよ…」
「知っとるわ。100年前から…な」
頬杖をついて視線を反らす平子
「真子、顔赤いよ?」
「やかまし」
「ねぇ顔見せてよ」
「絶対嫌や」
2人がわちゃわちゃと騒いでいると、襖をそーっと開けた一護と目が合った
「イチャついてるとこ悪ーいんだけど…」
細い目で、店が混んできたから手伝えと控えめな訴えが聞こえる
「はーい、今行くね」
「ちょ、お前もう少し休んでろや」
「平気。このくらい!」
まったく…
人の気も知らんで…
店に駆けていく琴乃の後ろ姿を優しく見つめていた
…─
久しぶりに触った伝令神機には、たくさんの連絡が来ていた
どうでも良いようなものから、それなりに大事な連絡まで
溜まりに溜まった留守電を聞き終えると、最後の新規マークの消えたメッセージの下に、愛しい人の名前があった