第52章 今、誰の隣に居ますか?
「お母様が急に声を上げて、木の上を凝視していたの」
「それってもしかして…」
「私たち…だよね?」
ハハッと笑う紫苑につられて、喜助も微笑する
「でも、もう一度姿が見れて…良かった…」
紫苑サンの、ご両親はもう亡くなっている
きっと、一目で良いからもう一度会いたくて、姿を隠して行ったんだろう
ボクはまた泣きそうな顔をする紫苑サンを抱き締めた
…─
先に休憩にいった琴乃がなかなか戻って来ォへんから、様子を見に行った
何かあったんやろか…
一護に声をかけて店の奥に行くと、倒れ込むように寝ている彼女の姿があった
「寝とるし…」
平子は琴乃の傍にしゃがみ、少しその姿を見つめると、ゆっくり立ち上がった
王印事件での琴乃のショックも相当なものやな…
特に事件の間、紫苑にしてしまったこと、言ってしまったことを悔いてないわけがない
かといって喜助を手伝える技術も頭脳もない
だから琴乃は、この店を守ることに全力を注いで今日までロクに休みもとらんと、働いとるんやろな
顔には出さへんけど…
布団を敷いてきた平子は再び琴乃の傍にしゃがんだ
髪をそっと撫でると、くすぐったそうに身動ぐ
「なァ…お前、俺と居って幸せやったか…?」
100年前、喜助に呟いたその言葉
直接聞く勇気もないその言葉を、ボソッと漏らした
一護、残業してくれへんかな…
琴乃を抱き上げて布団に寝かせて、店に戻る時
「幸せだったよ」
心臓が小さく跳ねて、反射的に振り返る
「起こしてしもたか…」
「真子、こっち来て」
その言葉に従い琴乃の傍にしゃがむ
体を起こした琴乃はふわっと俺の腰に手をまわしてきた