第52章 今、誰の隣に居ますか?
屋敷からゆったりとした動きの女性と、それを支えるように男性が庭先に出る
おそらくこの屋敷の当主
紫苑サンのご両親だろう
紫苑サンの目には涙が浮かんでいて、いつの間にかボクの手を強く握っていた
ボクはなにも言えず、彼女の肩を抱き寄せてさすることしかできなかった
『菫、あのことだが…』
ふいに聞こえた両親の会話
自然と耳をすます
『えぇ、紫苑も霊術院に入学が決まりましたから、そろそろ雪姫に話さなければなりませんね』
『そうだな…』
溢れそうになっていた涙を引っ込めて、紫苑は2人の会話を聞いていた
「なんの話しだろ…」
「雪姫…ってもしかして」
「私の斬魄刀。元々はお母様のものだったんだけど…」
腰にある紅姫がキィンと鳴った気がした
「紅姫と姉妹刀なんだよね。喜助さんから聞いた」
「え、あ…そうっスね」
なんスかこれ?
運命っスか?
いや運命なんて、少しも信じてなかったんスけど…
雪姫を…紅姫の姉妹刀を紫苑サンが持っているなんて…
『昨晩も紫苑は、うなされていたわ。これ以上中のモノが大きくならないと良いけど…』
『大丈夫…雪姫がいる』
『私のせいで…っ』
『菫だけのせいじゃない…』
一体何の話しを…
確かに私は物心ついたときから、夢見が悪かった
良くうなされて、何度も心配そうな顔をした両親に起こされた
それと雪姫と、何の関係が?
それに
"菫だけのせいじゃない…"
ってどういうこと?
パキッ
よろけて掴んだ枝が折れる音
喜助さんが支えてくれたけど、その音に反応したお母様がこちらを見た
『誰かいるの!?』
「紫苑サン、行きましょう」
「うんっ」
何かを感じ取った菫は、さっきまで紫苑たちが居たところを凝視していた
「思い出した…」
「え?」
「確か今日は、私と琴乃が霊術院の入学許可証を貰った日…」
そう、それでお母様の体調が珍しく良さそうで…