第52章 今、誰の隣に居ますか?
紫苑の痕跡が、手がかりが全く見つからない
発信器は相変わらずボクの昔の部屋を示している
一度瀞霊廷内を移動していたが、やっぱりその場所に紫苑の姿はなかった
幽霊…?
いやいや反応がある以上、紫苑が死んだとは考えにくい
違う次元…
もう、会えないのだろうか…
こんなことになるなら、もっと早く、渡しておけば良かった
喜助は壁に設置した隠し扉から、小さな箱を取り出す
この隠し扉は昔三番隊隊長のローズに頼まれて隊舎にこっそり作ったものと、同じ作りだ
中にはキラリと光るリング
喜助はそれを握りしめ、歯を噛み締めた
…─
「ねぇ喜助さん、姿と霊圧を隠せるようなもの…ないかな?」
紫苑サンから珍しいお願いをされた
「どこかに行くんスか?」
「うん…」
紫苑サンの表情は少し悲しそうな、少し嬉しそうな、いろんな表情をしていた
「試作品なんスけど…」
そう言って、今では何度か見たことのある外套がでてくる
「ありがとう…あの、付いてきてくれる?」
「え、いいんスか?」
紫苑サンに付いていくと、ある屋敷についた
夜一サンの屋敷と比べては悪いが、それなりに立派なところだった
紫苑サンは高い木の上、外套はしているけどそれでも見つかりにくい場所に身を潜めた
「あの、ここは?」
瀞霊廷にあり、この屋敷の大きさからしても、貴族の屋敷であることは間違いないだろう
「私の家…」
「え?そうなんスか」
そしてボクはこの家に起こった悲劇を聞いた
庭先で若い男女が3人談笑している
「私と、他の2人は使用人なの。まだ、霊術院に入る前かな…」
1人は西園寺家滅亡の原因となった男
もう1人は王印事件に巻き込まれた琴乃サンという、紫苑サンが心配していた親友らしい