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With me

第52章  今、誰の隣に居ますか?



喜助さんが選んでくれたのは、白地に薄紫の振袖…

昔、夏祭りに行くときに選んでくれた浴衣の柄と凄く似ていた


「あの、嫌でした?」

「違うの!ただ、やっぱり喜助さんなんだなぁって…」


今も、この子の中に居るのは、未来の喜助だ

きっと彼もボクだから、同じような柄を選んだのかもしれない

心にモヤがかかる


振袖を着て店を出てからというもの、喜助さんと全く目が合わない…


「あの…」

「はい?」

「振袖…似合わないかな?」


見上げた先の喜助は、何度かチラチラとこちらを見て頬を染めた


「スミマセン…あんまり可愛いから、直視できなくて…」

「…そんなことっ」


そう言って紫苑は少し俯いた

恥ずかしい

恥ずかしい

やっぱり少なからず100年以上も付き合っていると、慣れてしまうのだろうか

喜助さんの反応がかわいくて、なんだか初々しい


「手、繋いでもいいっスか?」


返事をする前に、右手をさらわれた


どうしよう…凄くドキドキする…




ボク本当どうしちゃったんスかね…

柄にもなく心臓が早い

こんな気持ち、初めてっス

ボクだけのものにしたい

手を繋いで、見せびらかしたい

これが俗に言う、恋、なんスか?

彼女が笑うだけで、ボクも思わず笑顔になる

ずっと一緒に居たい




…─




「なんじゃ喜助、珍しく口数が少ないのぅ」


正月休みも終わって、仕事が始まった


いっそ紫苑サンがこっちにいる間はサボってしまおうか…なんて考えていたら、頭に判子が飛んできた


「あ痛っ」


悪びれる様子もなく、飛び戻った判子を手に夜一サンはニヤニヤしている


「当ててやろうか」

「はい?」

「恋煩いじゃな」


喜助は目を丸くした


なんとなくは、気づいていた

この気持ちに


だけど実際今まで恋なんてしたことがなかったから、これが本当に恋なのか分からずにいた


「最近共に寝起きしてる女子か?それとも初詣で隣に居た女子か」

「ど、どうしてそれをっ…いや、同じ人っスけど」

「ほぉーなかなかの美人じゃったのぅ…しかし見たことがないな…どこの所属じゃ?それとも町娘か?」

「…教えませんよ」

「やっと本気になれる相手を見つけたのじゃな…儂は嬉しいぞ、喜助」


黙り込む喜助がますます面白い

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