第52章 今、誰の隣に居ますか?
隣で嬉しそうにはにかむ琴乃を見て、表情が柔らかくなる平子
なんだか2人が羨ましかった
食事を片して、再びエプロンをつけた
「俺店でてるから、お前らこの検品頼むわ」
「かったるいのォ」
「頑張ろう真子!」
キラキラの笑顔をした彼女に胸をトクンとさせ、2人で作業に取りかかった
「ねぇ真子」
「なんや」
手を動かしながら、琴乃はずっと気になっていたことを聞いた
「私に記憶が戻ったら言いたいことって、なぁに?」
「…覚えとったんかい」
そういや記憶を無くしてる間の出来事、覚えてるっちゅーてたな…
「なかなか言ってくれないんだもん。気になる」
「今度な」
「今度っていつよ」
「それはあれや、ほら…な?」
「あれ、でわかるわけないじゃん」
んー…と少し困った顔をしながら、明後日のほうを向いた平子はボソボソっと言葉を発した
色々ちゃんとしたら、な
「色々って?」
地獄耳か
「色々は色々や」
「ふーん…じゃあ私もまた今度にする」
「は?何がや」
「今度ね」
拗ねたように、意地悪するように、遊ぶように琴乃は頬杖をついてニヤリと笑った
「気になるやんけ」
「さー、検品終わらしちゃお」
問いただしたい気持ちを必死に抑えた
俺は教えへんのに、琴乃には教えろなんて…言えへんよなァ…
…─
「紫苑サン、初詣…いきません?」
喜助のお誘いに紫苑は心底驚いた
「いいの?」
極力外には顔を出さないようにしていた
この時代では今の私は、存在しない存在だから
「たまには息抜きしたいっスよね」
初詣に行く途中のお店で振袖を借りた
「本当は買ってあげたいんスけど、未来に持って帰ったら、ボクに怒られちゃいそうっスもんね。置いてかれても寂しいし」
なんてちょっと残念そうに笑う喜助さん
昔付き合ってないのに浴衣も買ってくれたし、貢ぎ癖でもあるのだろうか…
「それでも嬉しいっ」