第52章 今、誰の隣に居ますか?
それからなんとなく、紫苑サンと手を繋いで寝るのが毎日になった
多分今日も…
隣に合わせた布団からお互いの手を出して、触れ合う
紫苑サンが見ているのが、未来のボクでもいい
君に触れられるなら
「喜助さん…」
「はい?」
「嫌だったら断っていいからね」
「何の話っスか?」
「…………っていい?」
「えっと、もう一度良いっスか?」
「そっちいっていい…かな」
は…い?
そっちって、こっち?
ボクの?布団?に?
「一緒に寝ちゃ、駄目かな…」
訳がわからない訳がわからない
同じ布団で?
だって…
ボクは紫苑サンの中では過去の浦原喜助であって、紫苑サンが好きな浦原喜助にはどうやったってなれないのに
それってどういう意味で…
やっぱりボクで寂しさを埋めたいとか、そういうことなんでしょ?
「やっぱ忘れて、ごめんなさい」
向こうを向いた紫苑サンの背中が、とても小さく見えた
…いいっスか?未来のボク
だって目の前に寂しがってる女の子が居るんスよ?
少しでもそれを埋めてあげられるなら、彼女が少しでも安心したり、笑顔になってくれるなら…ね?
「紫苑サン、おいで」
「……いいの?」
紫苑サンはのそのそと、少し緊張しながらボクの布団に入ってきた
理性が持たなかったらごめん
「え?何か言った?」
「いーえ、何も。眠れそうですか?」
「うん。凄く…」
心臓がバクバクしてる
きっと喜助さんにも聞こえてる
どうしよう
喜助さんだ喜助さんだ
そりゃちょっと違う感じはするけど、喜助さんだ
匂いも、ぬくもりも、意外と筋肉質な身体も
ねぇ、喜助さん
会いたいよ…
「大丈夫…きっともうすぐ会えますよ」
こんなこと言うつもりじゃなかった
でもボクの腕の中で泣く紫苑サンを、どうにか励ましてあげたかった
ずっと此処にいれば良いのに