第52章 今、誰の隣に居ますか?
夜中、ふと目が開いた
隣の布団で寝ている紫苑サンの掛布団がずれていた
寒いだろうに
かけ直そうとしたとき、投げ出された手が目に入った
恋人
その二文字が頭をよぎる
恋人ってなんスか
その手に触れれば分かりますか?
アナタを抱けば分かりますか?
触れようとした手は直前で思い止まって、布団をかけなおしてまた自分の布団に戻った
…─
朝、目が覚めると
「…これは」
自分の手が、紫苑サンと繋がれていた
紫苑サンから?
それともボクが無意識で?
ドクンと心臓が鳴った
ドクン?
なんで心臓が鳴る?
別に手を繋ぐのも、隣で寝るのも、初めてでもなんでもない
何人もの女の人と寝てきた
のに
「……ん…」
起きそうだ
手を、離したほうが良いだろうか
紫苑サンからならまだしも
ボクが無意識にやっていたとなれば、あんまり良い気はしないはずだ
と、喜助が手を離そうとしたタイミングで、紫苑は起きるために手に力をこめた
「お…はよ…喜助さん」
「おはようございます、紫苑サン」
「あ…手…」
「あ、いやこれはなんていうか、起きたらこうなっていたと言いますか、決して意識的にやったことではないんスけど、もしかしたらボクが寝ている間に無意識にってことも無くは無いと言うか…」
紫苑サンはその手を振り払うこともなく、寧ろ凝視している
「多分、私が寝ている間に無意識に繋いじゃったんだと思う」
「え?」
「私、寝る前に喜助さんに触りたいなって思ってたから」
「紫苑サン…」
「あ、ご…ごめんなさい!嫌だったよね」
パッと離れた手がなんだか寂しい
どうして
もっと触れていたいと思うのは
「嫌じゃないっスよ。ボクも同じこと考えてましたから」
そう言って微笑んだ顔はもう反則
紫苑は思わず顔を反らした