第8章 デートしてくれませんか?
喜助の背に隠れるようにして、思わず喜助の羽織をキュッと掴む
「あの…指示されたとはいえ…あんなことして本当にごめん…なさい」
「ごめんなさい」
「私も…ごめんなさい」
許してあげられると思った
彼女たちは指示されてやっていただけだと思うし、謝りたいとまで言ってくれている
それで充分だと思った
だから彼女たちが来たら、大丈夫と言って終わるはずだった
なのに、上手く声が出ない……
「平子サン…」
紫苑の体の震えが止まらないことに気づいた喜助は、平子に声をかける
「…終いや」
平子は部屋から出るように3人を促す
「辛いこと思い出させてごめんなァ」
紫苑の頭を撫でながら平子は言う
「喜助、紫苑のこと任せたで」
今回ばかりは、喜助に任せたほえがええやろ…
「もちろんっスよ」
平子が出ていったあとも、紫苑の震えはとまらなかった
「…大丈夫。ボクがそばにいるから」
そう言って喜助さんは、私が落ち着くまで背中をさすってくれていた
……─
2日間、四番隊に入院という形になった
沙也加さんは一度も現れなかった
ひよ里さんに聞いた話では、霊術院の指導員補佐という役職に異動になったと聞いた
入院中にもう一度平子隊長がきて、あの3人は減給処分にしたと言っていた
あまり重くない処分にしてくれて、少しホッとしている自分がいる
「お世話になりました」
四番隊にお礼を言い、部屋を後にしようと廊下にでた
「紫苑サン」
「浦原隊長!」
「お迎えにきましたよン」
そう言いながらさりげなく、私の荷物を持ってくれる
思わず胸がキュンと少しだけ熱くなる
「ありがとうございます」
「明日から戻れそうですか?それとももう少し休んでもいいっスよ?」
「大丈夫です。明日からまたよろしくお願いします」
「うん、琴乃サンも待ってますよ」
浦原隊長は自室まで私を送ってくれた
荷物をバラすことまで手伝ってくれた隊長が帰ろうとしてるのを、ちょっと待ってください!と呼び止める
「あの…これ…」
「この写真……もしかして」
紫苑は小さく頷く
そこには張り合わされた2枚の写真があった