第52章 今、誰の隣に居ますか?
「…なるほど。つまりアナタは100年以上先の未来から来たんスね?その王印とやらの力で」
「はい、多分…。信じて…くれるんですか?」
どうやら今目の前に居る喜助さんは、100年前の、それも私と出会う前、二番隊第三席だった頃の喜助さんらしい
「もちろんっスよ。そういえば、まだ名前聞いてませんでしたね」
喜助さんなら、信じてくれるだろうと、心の何処かで思っていた
「あ、西園寺紫苑です」
「浦原喜助っス。って、知ってるんスよね」
喜助はヘラヘラっと笑いながら頭を掻いた
「それで、紫苑サンは元の未来に帰りたい、と」
喜助は目をぱちくりさせる紫苑を、不思議そうな顔で覗いた
「どうかしました?」
「あ、いえ…昔喜助さんにそうやって呼ばれていたなぁって思い出して…」
懐かしい…
付き合いたての頃の初々しさが、少しだけ甦った
「へぇ…じゃあ今はなんて呼ばれてるんスか?」
「今は紫苑て呼ばれて…」
そこまで言って恥ずかしくなって顔を伏せた
「えっと…紫苑サンと、未来のボクは、どういう関係なんスか?」
「あ、えっと…」
ここで恋人だなんて言ったら、今の喜助さんはきっと困るだろう
「…ひょっとして、恋人?」
ドキン─
胸が跳ねる
今さらこんなことを聞かれてドキドキするなんて、喜助さんだからだろうか…
「…なわけないっスよねぇ……だったらいいなって、思ったんスけど…」
頬をカリカリしながら得意のニヘラ顔の喜助は、黙り込んだ紫苑の表情に驚いた
視線を反らして、耳まで赤くなろうかという頬
確かにそれなら、辛そうな表情をしていたのも納得がいく
「え…と、……本当に?」
もうさっきの反応でバレバレだろう…
言わないほうが良いと思ったのに、一瞬にして崩れ去った
紫苑は小さく頷いた
「………」
喜助さんの反応が怖くて顔をあげられずにいる
やっぱり困らせてしまっただろうか…
突然未来から来て、未来の恋人です
なんて言われても、だからってどうすればいいんスかって、なりますよね