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With me

第52章  今、誰の隣に居ますか?



「あの、どうしてそんな傷だらけなんスか?」

「あ…あの」


喜助さんなのに、喜助さんじゃない…

元々の貧血と、血を流しすぎたことで頭がクラクラしてくる

鼓動が早くなって、どうしたらいいか分からなくなる


「私っ…」


一体此処はどこ?

現世で一度だけ読んだことのある、小説に登場するパラレルワールドか何かだろうか…

紫苑はしゃがみこみ、胸をおさえた


「大丈夫…ボクは敵じゃないっスよ」


優しく頭を撫でて、喜助は紫苑を安心させるように笑いかけた


「ごめんなさい…私」

「とりあえず髪拭いて、横になってください。多少は治療できますから」


四番隊に…とも思ったけど、なんだか訳アリっぽいから、止めておいたほうが良さそうっスね


「ありがとう…ございます」


一番綺麗そうな手拭いを手渡された

こんな時、いつも喜助さんが拭いてくれたのに…

手拭いで溢れそうになる涙を必死に抑え込む

肩が震えていることに気付いた喜助は、そっと紫苑の頭を撫でた


「泣かないで…」


何故だろう…初めて会った女性なのに、この女性が泣いていると胸が苦しくなる


紫苑は髪を拭き、布団に寝かせてもらった

その紫苑に喜助は治療を施していく


「布団…あとでちゃんと弁償します…。血だらけになっちゃったし」

「あぁ、いいんスよ」


優しく笑う顔はそっくりなのに

頭を撫でる手は同じなのに

私の大好きな喜助さんじゃないのかな…


「あの…、さっきの人…恋人……ですか…」


自分で言って、胸が疼く

喜助さんの恋人は自分なのに…


「す、すみません変なこと聞いて!」

「いえ、恋人は居ませんよ」


紫苑は、そう言えば…と昔夜一が言っていた言葉を思い出す


"1人の女に執着することはなく、取っ替え引っ替えで、後腐れない関係ばかりだった"


もしかしたら今此処にいる喜助さんは…


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