第51章 The DiamondDust Rebellion
「その時東雲はもう、記憶を無くしていたんだろう?」
「あぁ。記憶を無くしていた琴乃には…俺しかいなかった…っ。頼ってくる琴乃を、…俺は手放したくなくて…ッ…それなら記憶が戻らなければいいと思った」
草冠は何度も沸き上がってくる血を飲み込み、時に吐き出しながら続けた
「記憶を無くす程の出来事…そんなこと…思い出さないほうが琴乃の為だと思った」
冬獅郎はハッとした
「まさか…それで洗脳を…?」
「そうだ…だから、上から更に記憶を封じて洗脳した。琴乃が俺から離れていかないように…」
草冠は目を伏せた
「俺はそういう気持ちには疎くてな…こんなやり方しか、分からなかったんだ…琴乃を救う方法が……だから冬獅郎…君が俺のことで思い詰めているのも、気づかなかった…」
久しぶりに見る…優しい目をしていた
「…ぐ…ぁ」
一護によって傷つけられた身体が悲鳴をあげている
「草冠!」
よろつきながら、斬魄刀を支えに辛うじて立つ草冠
「…俺は、琴乃に特別な感情を抱いていたのかもしれない…」
先ほどまでの龍の姿の響く声とは別で、徐々にか細くなっていく声は、双極の三人には聞こえていないだろう…
「浦原喜助に…悪かったと、伝えておいてくれ…」
「…分かった」
その言葉の直後、草冠は血を吐いた
死期が近いことは、誰が見ても分かった
「草冠…終わりにしよう」
冬獅郎は刀を構えた
「天才だよ…やっぱりお前は…俺を二度も、殺そうってんだからな…」
冬獅郎の羽織にも血が滲む
「だが俺は死なんぞ…俺は、俺の存在を…」
「草冠…俺たちずっと…友達だ」
「なぁ…もし、俺が…」
草冠はその先の言葉を言うことなく、その魂魄は空に霧散していった
「もし…か」
草冠が消え、切られた王印は元の形となり再び舞い戻った
それを一護が拾う
「こんな小さなもんが…」
一護は冬獅郎に近づいた
「礼を言う、黒崎」
「あいつさぁ、後悔はしてねぇんじゃねぇかな」
一護は冬獅郎に王印を渡した