第51章 The DiamondDust Rebellion
剣八は四人のすぐ横の塔を切った
「隊長!」
剣八は一角もろとも斬る勢いで刀を振るった
「邪魔だー!」
「上に急げ」
巻き込まれるのはごめんだとばかりに、四人は上へと急いだ
…─
バランスを崩し、崖から足を踏み外した琴乃の目の前には赤い炎が迫っていた
インとヤンが変化した敵の、流れ弾だろう
咄嗟のことで身動きがとれない琴乃は迫り来る炎に、目を瞑った
「琴乃!」
衝撃はあるのに痛みがない
炎とは違う、何かあたたかいものに包まれている感覚
既視感を覚えた
「真子…?」
そこには琴乃を包み込むようにして、背中で炎を受け止めた平子がいた
「思い出したか?…ったく…足元くらい、ちゃんと見んかい……ドアホっ」
顔をしかめる平子の行動が理解できずに、琴乃は思考を巡らせる
真子…
咄嗟に口からでた名前
知らないはずなのに、どこか懐かしい…
敵のはずなのに、なんであたたかいの?
私は、この温もりを知ってる…?
「お前は昔っから…っ、そそっかしいやっちゃ、なっ」
途端、平子は力を振り絞り琴乃を丘の上まで投げ飛ばした
「喜助ー!ちゃんと受けとれや!」
「あっ、ちょ…!」
投げ飛ばされた琴乃を、喜助が受け止めた
「平子サン!」
琴乃を投げた反動で、平子はまっ逆さまに落ちていく
「喜助さん!」
「紫苑、琴乃サンを頼みます。平子サンを助けにいきます」
喜助は琴乃を紫苑に渡し、平子を追って丘を降りた
双極の丘には紫苑と琴乃の2人だけになった
「……」
「……はっ、離して!」
琴乃は紫苑から飛び降りた
「思い出したの?平子隊長のこと」
「知らない!知らない!私の全ては草冠様のために…!」
気持ち悪い気持ち悪い
記憶がおかしい
私には草冠様しかいないのに
平子?真子?
紫苑?
知らない知らないっ
"何をしている琴乃"
「琴乃?」