第51章 The DiamondDust Rebellion
震える手を上から包み込む
そのなかでぎゅっと拳をつくる紫苑
「私は……」
紫苑は息を飲んだ
「もし琴乃が…無理矢理起こされて、記憶が無いことを利用して…もしかしたら消されて、望まないことをさせられているのだとしたら…それを解いてあげて、安らかに眠らせてあげたい…」
喜助は優しい目で、紫苑の話を聞く
「そうではなくて、自分の意志でこんなことをしているのなら……私が……私がっ」
そこで息を詰まらせた紫苑を、喜助は抱き寄せた
その先は、聞かなくても分かる…
きっと、どちらを選んでも紫苑にとって辛いことには変わりない
「でもっ……私……!」
「紫苑のしたいようにすれば良いよ…」
「喜助さん…」
「ボクはどんなことがあっても、紫苑の味方だから…」
暖かい喜助の体の熱を貰うように、抱き締め返した
「涅サンに見切りつけられて、護廷をクビになったって、紫苑の居場所は此処にあるっスから…」
ほんと、この人は昔から、私の欲しい言葉をくれる
喜助さんの言葉には、魔法でもかかってるんじゃないかってくらい、安心させる力がある
「……ありがとう」
何度感謝を伝えても、伝えきれない
紫苑は喜助の、背中に回した腕に力を入れた
「さ、もう寝ましょ。夜更かしはお肌に悪いっスよ」
「お肌って……ふふ」
「えー、なんか可笑しいっスか?」
「別にぃ。さ、行こう」
久しぶりに見た紫苑の笑顔
彼女が笑うだけで、ボクの心は熱を持つ
どうか、なるべく彼女が、辛い思いをしない道を歩けますように
…─
あの時私の頭に飛び込んできた映像は、一体何なのか…
紫苑という人物が、私を刺していた
あの人が私を殺した?
私のかたき?
琴乃は死覇装の合わせを少しずらし、傷痕の残る胸元をそっと撫でた
どうして私、殺されたの?
どうしてあの人は、私を殺したの?
記憶がない
私の記憶はどこ?
そのなかに、答えがあるの?
あの人は、また私を…殺すの?
琴乃は斬魄刀を握りしめ、眠りについた